1.電動機とは
「電動機」とは電力を動力源として回転する機械です。一般的には「モーター」とよばれ誰しも一度は目にしたことがあるであろう機器です。
ではこの電動機、どのような原理で回転力が生み出され動作しているのでしょうか。代表的な種類とともに解説を進めます。
2.種類と回転原理
いまや電動機は様々な種類のものが世の中に出回っています。ということはその目的も様々で、ただ回転すればいいものから位置を把握しながら回転と静止を正確に制御されるためのものまでその用途は非常に広くなっています。
今回は回転原理というところに視点をあてて解説をします。回転原理の違いはそのまま電源の違いにもなります。
ただしそのどれにおいても電磁気における物理法則がはたらいており、「フレミングの法則」や「右ねじの法則」などに則っています。またどれにおいても極性の入替わりによる回転力創出が発生しています。
さらに、固定子と回転子で構成されているのも電動機の構造的特徴であり、この二つの部品間で発生する電流の磁気作用を利用して回転子を回転させるというものになります。また固定子であっても回転子であっても、主たる電流の生じる巻線と鉄芯から成り電流の磁気作用によってトルクを発生させるものを電機子といいます。
1)直流電動機
おそらくですが、男性ならもれなく触ったことのある電動機ではないでしょうか。マブチモーターという直流電動機がありますが、名前こそ知らなくても見たことや触ったことのある人は多いのではないでしょうか。
事実、小中学校の電気とモーターの授業ではこのマブチモーターが使われる場面が多いはずです。
ではこのマブチモーターなどの直流電動機はどのような理屈で回転しているのでしょう。
以下は直流電動機の回路図です。模式図となり、実際の構造よりわかりやすくするために簡略化しています。
直流電動機では交流電源のように極性の入れ替わりは起きないため回路上で極性が入替わるように工夫されています。整流子とブラシがその極性入替えのための部品となります。
上の図でいうと「直流電動機の回転①」と「直流電動機の回転②」を交互に繰り返すことで回転しますが、今一度箇条書きにて回転がおこるメカニズムを以下に記載します。
A,固定子となる磁石で磁界をつくり、電機子で回転子となるコイルを図のように配置する。
B,直流電源(電池)から電機子となる配線に電流を生じさせる。
C,磁界内の磁束の向きと、電流の方向からフレミング左手の法則に従って力が発生する。
D,発生した力に従い決まった方向に回転が始まる。
E,90°付近(毎)に整流子とブラシによる極性の入れ替わりがおきる。
F,入れ替わった極性でのフレミング左手の法則に従い力が発生する。
G,これまでと同一方向への回転が促される
H,以降Cから電源が断たれるまで繰り返し
2)単相誘導電動機
構造がシンプルな、かご形回転子をもつ電動機をモデルに説明します。
単相誘導電動機は単相交流電源下で動作する電動機です。極性の入替りについては元々の電源が交流であることから放っておいても極性の入れ替わりがおきます。ですので一度回転しだしたら入替わる極性を追うように回転子が回り続けるので特段回路上での工夫は要りません。これには「アラゴの円盤」とよばれる「フレミング右手の法則」による「渦電流」の発生現とさらにそれに伴う「フレミング左手の法則」が発動し回転力を生み出す結果となっています。
磁石に付くはずのないアルミの円盤の直上で磁石をくるくる回すとなぜかアルミの円盤もついてくるように回るという実験はよく知られています。かご形回転子はこの現象をうまく利用できる形となっています。
ただし、単相交流における電動機では極性の入れ替わりによる磁界の向きの入れ替わり(交番磁界)こそ発生するものの最初の回転トルク(始動の方向と力)が得られません。そこで位相のズレなどをわざと発生させることで一定方向の回転トルクを得る方法が採られています。
以下は上下するだけの交番磁界を、クルクルと回る回転磁界へと変化させさらに一定方向の回転トルクを得られるように工夫された単相誘導電動機の模式図です。こちらもあくまで説明用の模式図となりますので実際の構造に対してかなり簡略化された表現となります。ですが動作原理としては変わりありません。
回転トルクを生み出す主たるコイルである主巻線とコンデンサを含む補助巻線を空間的に90°ずらして配置します。こうすることにより「右ねじの法則」から時間的にも空間的にも90°ずれた磁界をつくり出すことが可能となり、更にはベクトル(方向をもつエネルギー)合成により磁界はクルクルと一定方向に回転することになります。これを「回転磁界」といいます。
こうして単相誘導電動機は回転することが可能となります。ただここで解説しているのは一例であり、この他にもくまとりコイル形の運転方法などがありますが、いずれにしても先に説明したようなエネルギーの向きとその発現タイミングをずらすことで回転力を得るように工夫されています。
3)三相誘導電動機
ここでも同じく、かご形回転子をもつ電動機をモデルとします。
三相誘導電動機は先の単相誘導電動機における回転する磁界すなわち回転磁界をもっと容易につくりだすことが可能です。「R相(U相)」「S相(V相)」「T相(W相)」のコイルを順番に配置してあげるだけで回転磁界をつくりだし、始動トルクと回転の継続が可能となります。
下の模式図では磁界が回転するように配置されたコイルを表しています。三相交流電源による電圧波形は各相が120°ずつ時間的にずれています。もちろん空間的にも一定角度(下の図では60°)ずつずれていることから磁界の方向が次々と移り変わることで回転する磁界を得ることができます。
この電動機は回転方向の変更が容易です。機械的に問題無いのであれば3線のうちどれか2線を入替えることで逆回転をつくりだせます。
更に速度変更も比較的容易であり、対となるコイルの数(極数)を変更することやインバータを利用した周波数変更で可能となります。
3.電動機は文明の利器の代表格
以上が電動機の回転原理についての説明となります。すごく端的になるべくシンプルに説明したつもりではありますが実際ほもっとずっと奥が深いものになります(電気理論全般が非常に奥深いものです…)。しかし、メカニズムだけでも知っているとメンテナンスや選定に役立つと考えます。
個人的には数ある文明の利器の代表格ではないかと思いますので筆者も興味の続く限り深く知りたいと感じます。
また、三相誘導電動機のインバータ利用における記事はこちらになります。あわせてどうぞ。