流量カウント異常

電力と制御の体験記
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1.カウントしない

夏の日差しの暑い日でした。その日も朝礼を終え早速自分の作業に取り掛かろうとしたときに呼び止められました。

「takuくん…水の流量カウントが出来ないんだが、みてもらえないかな…」

当然断る理由も無いので直ぐに現地へ向かいました。

「試しに一回水流せますか?」と訊ね問題ないという回答が得られたので試しに通水。

「やっぱり去年と同じだ…」

そうなんです。この現象、前年の夏の終わりに一度発生していたのです。

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2.夏にばかり!?

前年の夏にも発生したこの異常、実は調査中に収束してしまっていました。

2回の現状調査で回路の状態を確認している最中に、パッタリとその発生は途絶え何事もなかったかのように正常動作に戻ってしまいました。

その後も2〜3回それらしい現象を呈したものの、筆者が現地に向かい確認しようとしたときにはやはり症状は消え、「?」だけが残ってしまっていました。

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3.それでもじゅうぶん!

※画像の流量計は実際とは関係ありません

しかし、筆者も2回も現状をみて情報ひとつ拾っていなかったわけではありません。そしてその時点で得ている結論はズバリ「流量計そのものの異常」でした。

この間に得たことは、実機と図面から制御盤内部の異常ではないこと、またPLCのパルスの読み取りとその挙動も調査済で、それらにも異常が無いことは確認がとれていました。

さらに、リレーの挙動がおかしいことも目視と電圧測定でわかっていました。動きとしては高速でチャタリングを起こしているようでした。

通常は最大0.5[s]程度の周期でON/OFFを繰返すようでした。充分人間の目で追える速さですが、そのときはとても追えるものではなく、ちゃんとOFFしているのかさえ不明なくらいでした。それが証拠に回路計でパルスをうけとるリレーコイルに現れる電圧(DC24[V])をみても、0[V]になる瞬間がほとんどありませんでした。

ただ一点だけ冬の間は全く、それこそ発生が0%であることは少々ひっかかりました。なぜなら配管中の流体である水も常に40[℃]に温められているので熱が原因による流量計の異常とも断定し難かったのです。

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4.いざ流量計交換

それでも可能性のあることを放っておくわけにはいきません。

制御盤内での異常がみられず、リレーコイルに24[V]がかかりっぱなしということからやはり流量計を交換しにかかりました。

元々実装されていた流量計はかなり高価なもので、且つ配管から切り離す必要があり、入手も時間がかかるということです。そこで、精度こそ若干劣るものの検証用には最適な低コストの流量計を実装し試運転に挑みました。

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5.当たり!

試運転の結果は、やはり流量計が原因でした。交換後の設備ではそれはそれは気持ちのいいくらいにカウントが進み、本来の当たり前の動作を取り戻しました。

夏しか発現しなかったこの現象から筆者の頭に常にあったのは「半導体素子は温度上昇により電気抵抗が降下する」というものでした。この特性により異常な高温に晒された流量計内部のパルス発信部がターンオフ(ON状態からOFFに戻ること)できなくなっていたのではないかと考えています。

兎にも角にも、無事その夏はスムーズな生産が可能となり納期を割ることなく、また現場の人達のストレスも取り除けたと実感しました。

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6.実は…

ところでこのトラブル、流量計を疑っていたのは筆者くらいでした。関係者はほとんど皆、「常に40[℃]の水が流れているのだから熱が原因でこの症状が夏だけ出るというのは考えにくくないか?」ということでした。

たしかに、言われてみると最もなような…と、悩みましたが逆に消去法でいくと流量計しか考えられず、しかも接液部とパルス発信部はボディの分だけ距離があり電装系全体が常に温められているわけではありません。ですので筆者は流量計の異常を半ば確信していました。

ホントのところ、この筆者の考えを周囲の関係者に説明することに一番時間を割いたかもしれません。関係者は皆、電気や制御の専門ではなく製造や生産管理のプロでした。今思えば、もっと懇切丁寧な説明をすれば割いた時間が半分で済んだかもしれない。もっと筆者の知識が深いものであれば割いた時間をさらに半分にできたかもしれない。という思いが今もあります。やはり不断の努力による知識や経験の蓄積がまだまだだな…と感じた一例でした。

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