電気の資格〜技術技能と管理〜

受電・変電
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1.電気をさわるために

見出しで「電気をさわる」という表現を用いましたが、本当に充電部に触る話ではありません。それはただの感電です…冗談はさておき、電気の工事や電気エネルギーを安全に取扱うためには資格が必要であるということをご存知でしょうか。

「知ってるよ。『電気工事士』だろ。」

という回答がすぐに返ってきそうですね。正解です。

ですが、電気に係る資格はなにも電気工事士資格だけではありません。更にいうと、先の「電気エネルギーを安全に取扱う」ための資格等は別途存在します。更にさらに、これらには細かく区分があり各々の基準により取扱える範囲が法的に定められています。制御盤設計などの職務にはその資格が無ければ扱ってはならないなどの資格はありませんが、工事をおこなうためであったり、電気エネルギーを安全に扱うために必要な資格が存在します。

今回はこの辺を少し掘り下げてみてみようと思います。

このような話は「法規・法令」が関わるために面倒に思われがちであり、また電気技術的な話からは遠いとも思われがちですが、全くそんなことはありません。

学習を進めていくと電気における(他分野もそうだと思いますが)法規は科学的また物理的根拠からその基準が定められていることがよくわかります。

ここでは電気法規の技術的詳細について説明するわけではありませんが、そこに関わる資格について触れていきます。

これを理解するかしないか、意識するかしないかで自身の学習方針および人生設計の明確化ができるかできないかの大きな差となります。

電気の分野で仕事をすることを志したとき、自分は工事業をしたいのか電気管理をしたいのか等で学習と経験値取得の道が分かれます。

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2.電気系資格と職務範囲

電気系の資格にはどんなものがあるのか、そしてそれらはどのような職務で必要となるのかについて説明します。

1)工事系資格

電気工事における資格を解説します。

a.第二種電気工事士

電気系資格といえばまずこれでしょう。この資格で携わることのできる職務等について以下に記載します。

職務

低圧の電気工事に従事可能

扱える設備

一般用電気工作物

具体的には600[V]以下の電圧で受電する設備または小出力発電設備。小出力発電設備とは太陽光発電設備においては50[kW]未満、風力,水力発電設備においては20[kW]未満、内燃力発電設備においては10[kW]未満のものをいいます。

b.第一種電気工事士

特殊な電気工事を除く電気工事全般を実施できる資格です。工事系の資格取得を狙うならここがまずひとつのゴールになるのではないでしょうか。

職務

高圧を含む電気工事に従事可能

扱える設備

500[kW]未満の事業用電気工作物までの電気工事が可能です。ただし後述の特殊電気工事を除きます。

c.特殊電気工事資格者

先の電気工事士に比べ、あまり知られていない分野での電気工事資格です。以下の二種類に分類され、同じ特殊電気工事資格者であっても、どちらも別々に資格を保有していなければ該当する工事に従事することはできません。また、前提として電気工事士の資格を有していなければなりません。

職務

特殊電気工事に従事可能

扱える設備

ネオン設備・・・特殊電気工事資格者のうちネオン工事資格者のみが、この設備の電気工事に従事可能となります。

非常用予備発電装置・・・特殊電気工事資格者のうち非常用予備発電装置工事資格者のみが、この設備の電気工事に従事可能となります。

d.認定電気工事従事者

第一種電気工事士の免状を取得するためのステップアップ資格としての位置づけにあります。第二種電気工事士や後述の電気主任技術者等の免状を保有していることが前提です。

職務

自家用電気工作物の低圧部分であってかつ電線路を除く電気工事に従事可能

扱える設備

職務の項で記載しているとおりですが、第二種電気工事士免状の無い状態でこの資格を保有していても、第二種電気工事士で従事可能な一般用電気工作物の電気工事には従事できません。また、「電線路」という言葉が出てきていますが、これには「送電線」と「配電線」という意味が含まれ、ここに関する電気工事も従事できません。構内外での電柱間を渡る架空電線路や地中を走る地中電線路などの主幹にあたる工事もこの資格では従事不可ということになりますので注意が必要です。

2)工事監理系資格

建設工事を受ける事業者は営業所毎に専任技術者を配置する必要があり、工事現場においてはその規模に応じて監理技術者や主任技術者を配置する必要があります。これらに専任可能な資格となります。

a.2級電気工事施工管理技士

建設業法でいう「一般建設業」における営業所の専任技術者や工事現場の主任技術者に専任可能です。

職務

電気工事に関する施工スケジュールの管理や安全,品質の管理

管理範囲

元請としての下請発注額が40,000[千円]未満となる一般建設業の範囲での工事管理が可能です。工事現場の主任技術者として専任されることができます。

b.1級電気工事施工管理技士

建設業法でいう「特定建設業」における営業所の専任技術者や工事現場の監理技術者に専任可能です。

職務

電気工事に関する施工スケジュール管理や安全,品質の管理

管理範囲

一般建設業,特定建設業の双方での工事管理が可能です。工事現場の監理技術者として専任されることができます。

3)保安管理系資格

一般用電気工作物以外の電気工作物(事業用電気工作物)では必ずその保安の職務にあたる者を選任する必要があります。以下の資格は、事業用電気工作物における保安監督を実施することができる資格です。

a.第3種電気主任技術者

電気保安資格の最も下位の資格です。下位とはいえ、試験難易度も比較的高いといわれ、国内の70〜80%の事業用電気工作物がこの資格で保安監督可能といわれています。

職務

事業用電気工作物の工事,維持及び運用の保安管理

保安の範囲

電圧50,000[V]未満(出力5,000[kW]以上の発電所を除く)の事業用電気工作物の保安監督が可能です。具体的には点検業務やその合否判定、また更新計画の策定や各種届出,許可申請があります。電気工事においても工事士への理論的指示や工事士からの工事内容における質問への対応ができなければなりません。

b.第2種電気主任技術者

第3種電気主任技術者の上位資格です。保安管理の範囲も広くなります。

職務

事業用電気工作物の工事,維持及び運用の保安管理

保安の範囲

電圧170,000[V]未満の事業用電気工作物の保安監督が可能です。具体的な職務内容は第3種電気主任技術者と同じです。

c.第1種電気主任技術者

事業用電気工作物の保安監督範囲において一切の制限の無い資格です。「電気の司法試験」といわれるくらい難易度の高い資格となります。

職務

事業用電気工作物の工事,維持及び運用の保安管理

保安の範囲

すべての電気工作物の保安監督にあたることが可能です。

4)エネルギー系資格

電気は言うまでもなく「エネルギー」の一種です。ですので工事士資格も管理資格も強いて言えばエネルギー系資格なのですが、この資格がどのような観点からのものなのか説明します。

a.エネルギー管理士

エネルギーを合理的に、つまり無駄にすることなく使用するための管理者資格です。これまでの資格は、施工的にも技術的にも安全が目的となるものでしたが、ここでは合理性の追求が目的となります。

なお、このエネルギー管理士は試験が「熱分野」と「電気分野」の二種類に分かれていますが、いずれで取得しても同じエネルギー管理士となります。

職務

工場、事務所等におけるエネルギー使用の合理化の推進

年度毎のエネルギー使用状況報告(定期報告書)

管理範囲

エネルギー消費設備や機器が対象となります。

原油換算で年間3,000[kl]以上のエネルギー量を消費する工場や事業所は「第一種エネルギー管理指定工場」と位置づけられ、その中でも製造業,鉱業,電気供給業,ガス供給業,熱供給業に該当する工場等ではエネルギー管理士免状を保有する者からエネルギー管理者を選任する必要があります。

また、原油換算で年間1,500[kl]以上3,000[kl]未満のエネルギーを消費する工場や事業所は「第二種エネルギー管理指定工場」と位置づけられ先の業種以外の工場等とこの第二種エネルギー管理指定工場ではエネルギー管理講習を受けたエネルギー管理員を選任する必要があります。

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3.工事をしたい?保安をしたい?

以上、電気をさわるうえで必要となる資格を紹介,解説しました。電気をさわるにあたって「低圧電気取扱特別教育」という講習のみで取得可能な資格もありますが、これは資格というより受講義務というところから今回は省略しています。

電気の資格といっても様々に細かく分類され、各々職務や範囲が異なります。筆者が電気保安に従事するようになってしばしば耳にした言葉に「保工分離」というものがあります。これには「保安監督に従事する者と工事に従事する者を分けることで顧客の利益を確保する」目的があります。こういうことからも自身が工事をしたいのか保安監督をしたいのかをしっかりと見据えておく必要があります。同じ電気の仕事でも制御設計や各種盤製作などの場合、これはこれで必要となるスキルは変わってきます。

とにかくは自身がなにをしたいのかをしっかり見据えて挑戦をされてください。全力で応援します!