電圧はどこから?〜誘導起電力〜

電力と制御の体験記
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電気における解体撤去

ある日、今後使用予定のない設備に関する解体の話がもちあがりました。企業内でこういうときは決まって次のネタがあるときですね。ですので当然のことながら他と同様に納期というものがあります。

ただ、解体といえど電気や制御においては上から順番にどんどん捌いていけるような話ではありません。どういうことかというと、たとえば制御盤の元電源を遮断しようにもその先に分岐回路は無いか、該当の範囲全てがそこの遮断器のみから電源供給されているのか、また制御において外部とやりとりをしているのか、しているとしたらどのような信号をやりとりしているのか、をひとつひとつ丁寧に調べておく必要があります。

もちろん長年携わっていることによる記憶や残されている図面などが確かなら現地を調べにかかる前にある程度段取りがみえてきます。

しかし現実は毎回はそうそう甘えさせてはくれません。今回の解体については電源系統図面を探そうにもどこにも見当たらず、また自分が携わる遥か以前に立ち上がった設備ゆえにまさか確かな記憶などあるはずもありません。

そんな中でどうするかというと、かき集めた情報をたよりにあとは現場を徹底的に調べ上げます。そして安全が確保された後に晴れて作業開始となります。

ただ、そこは営利団体です。冒頭にあるとおり納期があります。限られた時間で知りたいことを素早く調査しなければなりません。

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いざ電源遮断!

このときも調査をすすめながら同時に作業可能な箇所限定である程度の解体もすすめていました。そうこうするうちに電源とその分岐先も特定し、更にやりとりをしている信号の影響も確認できました。いざ電源を遮断です。これで解体撤去作業も加速すると確信していました。

ご想像のとおり、分電盤や制御盤などの解体撤去においては電源がすべて断たれると格段にやりやすさが変わります。かなり捗リます。

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電圧がある!!

電源も確認した後遮断し線間0[V]を確認、制御回路における連携設備への影響も取り除き、あとは気持ちよく外部端子の配線を外していく(離線)のみとなりました。では早速…と、その前に念のために安全の確保を裏付けるための対地電圧測定をしました。

すると、計測された数値は164[V]。「え?そんなバカな…」他の端子についても片っ端から対地電圧測定したところ、結果は80〜170[V]でした。

「なんで?ちゃんと電源落としたのに…どこかから電源が回り込んで…いやそんなはずはない。そんなことになっていたらもっと別の異常(循環電流など)がとっくに起こっているはず…誘導?いやいや10〜20[V]程度ならまだしも…」

頭の中は少しの間、状況の理解に追いつきませんでした。ただ頭の中が追いついていないからといって一切行動しないというわけにはいきません。

すべての端子の対地電圧を測り外部配線の行き先をくまなく再調査し制御電源電圧をいま一度確認しました。しかしやはり見落としなどはありません。

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ほんとうに見落としは無い?

「なんで?」ばかりが頭の中を駆け回る間、自らに努めて言い聞かせたのは「とりあえず落ち着け。どうせどっか見忘れてるよ。いずれにしてもこの状況じゃ手が出せんのだから、いちどゆっくり確実に確認していこう。」でした。

そこでひと呼吸おいて、ほんとうに自分が追いかけている外部配線は該当のものなのかをこの目で確かめにいきました。配線ナンバーだけで済ませていたところをダクト内まで目視しようということです。

下の図における青い部分の外部端子記号が離線箇所の一部です。このような箇所がいくつもあるものと考えてください。そして外部配線が引き込まれている別の制御盤で該当と思しき配線のあるダクトカバーを外しました。

すると、想像を少し超えてくる光景が目に飛び込んできました。長さ50[cm]ほどのダクトの中におよそ3[m]はあろう長さの配線がくるくる巻いて押し込まれています。

ちょうど下の図が別制御盤内での配線の様子です。赤いコイル記号の部分がまさダクト内でぐるぐる巻きにされていた箇所になります。

速攻でピンときました。というか確信しました。「誘導起電力だ!間違いない!」試しに端子部はもちろん繋げたままにぐるぐる巻きの配線を引き伸ばすだけ引き伸ばしました。そうしたところすぐに撤去対象の盤内で該当端子における対地電圧は20[V]程度まで下がりました。

このような状態の箇所は他にもあり、それらを引き伸ばすことで他の端子部の電圧もどんどん落ちていき結果全て無電圧とよべる域まで落ち着きました。

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結果やっぱり見落としていた

そうなんです。見落としていたんです。というより見ていなかったんです。この事例はまるで制御盤から「端折らんと、しっかり目で確認せえよ。そんな時間もかからんのだから。」と言われているようでした。

これから作業するうえで触れる相手のことをちゃんとわかっていないというのはリスキーなことです。ましてや電気の仕事に携わる者としてはまだまだ認識が浅い証拠。

よっぽど明らかで間違いのないことは別としても、せめてすぐに確認できるところは面倒くさがらず極力いや必ず確認すべきと感じた体験でした。