指数・対数~電気計算で当然のように…~

電気・電力
スポンサーリンク

1.突然出てくる指数や対数

皆さんは数学という学問についてどのようなイメージがありますか?「ただただ苦手な科目」や「必ず眠りに誘う話」などマイナスのイメージが先行する人は多いのではないでしょうか。たまに、「数学だけは得意」とか「他はどう勉強していいかわからないけど数学は勉強しやすい(楽しい)」という人もみかけますが、あまり多数派では無いように感じます。

このサイトでも必要以外では可能な限り数学の公式などを出さずに説明すること、また出すとしてもよほど大切な事柄に対してや追求したい人のために限った記事の構成とすることをひとつの基準にしています。

とはいえ、どうしても電気と数学は切り離すことができず、数字無しでの電気の各分野における理解は浅いものとなってしまうことも事実です。

そこでこのサイトでも必要以上に数学を敬遠することなく、でもなるべくゆっくりと自他共に数学に馴染んでいけるように工夫をしたいと考えました。

今回はその一環として「指数」と「対数」について説明をします。この指数と対数は電気の分野でもかなりの頻度で登場します。対数はそうでなくとも指数は当たり前のようにあらゆる計算で出てくることとなります。しかも、これらはそれ自身については「知っていて当たり前」「解って当たり前」かのように突然登場します。数学が好きな人、または数学の基礎を固めた人にとっては驚くことも無いかもしれませんが、そうでない人にとってはこのようなことも障壁となって立ちふさがります。

ですが、もし数学が苦手であっても安心してください。筆者は歴代の有名な天才数学者でも、ましてや数学を誰かに説明する仕事をしているわけでもありません。もっというと凡人の中でも要領の悪い方です。

ただ電気という事象に興味があり、そのエネルギーや制御のことを知りたいということで学んだ結果、少しずつ数学も理解も進んできているというだけのことです。凡人の筆者でもスローペースながらではありますが着実に知識量は増しています。必要となるひとつひとつの知識を確実に手に入れていきましょう。

スポンサーリンク

2.指数

まずは、この記事のテーマのひとつである「指数(しすう)」という数について説明します。この指数は電気の分野においても至るところで目にします。必携の知識と考えて間違いありません。

1)複数回掛ける

指数を説明するにあたっては必ず「冪乗(べきじょう)」という計算方法を知っておく必要があります。これは、「同じもの(数)を複数回掛ける(乗算する)」ということです。「2✕2✕2」や「5✕5✕5✕5✕5」また「10✕10✕10✕10✕10✕10✕10」などは全て冪乗という計算の種類になります。似たような言葉に「累乗(るいじょう)」というものもありますが、これは掛ける回数が自然数であるという定義があるようです。

同じ数を何度も掛ける場合、掛ける回数が多くなればなるほど非常に手間のかかる表記になります。この手間を大幅に短縮したものが指数表記となります。表記方法は複数回「掛ける数」の右上に「掛ける回数」を記述するというものです。先の「2✕…」や「5✕…」また「10✕…」は各々「23」「55」「107」と表記することとなります。読み方は各々「2の3乗(2の3じょう)」「5の5乗」「10の7乗」となります。この例でいうと、特に「107」に至ってはその恩恵が見て取れます。そしてこの計算式は別途以下のように表すことができます。

このとき、「掛ける数」を「底」といい、この底の右上に記述した「掛ける回数」のことを「指数」といいます。「107」ならば底は「10」指数は「7」ということになります。

2)指数法則

先ずは、指数がどのようなかたちの数であるかについてを説明しました。それは繰り返し掛けるという作業で表される数値であるということでした。

では、次に指数どうしの計算はどのように行うのかについて説明します。

指数どうしの計算では「指数法則」というルールがあり、これを利用することで式を変形させて計算することができます。これは、指数部分の四則演算などについて導かれた法則です。以下にまとめます。

底か指数が共通化されているならば上記のような法則を利用して値の計算や数値の簡略化が可能となります。

実際に上の法則に従い、「a=3」「b=2」「m=4」「n=3」として各々の計算をしてみます。

実際に定数として計算する場合は上記のようになります。ただし、指数法則の利用目的は、ただ単純な計算の簡略化にあるのではなく、これを利用して式を変形させることにより計算可能な状態にするところにあります。式の左辺と右辺を自由に使いこなすことで、一見計算し難くみえる式も計算可能な状態へと変化させることができます。

3)いろいろな指数

指数は必ずしも自然数であるとは限りません。掛ける回数としての数、即ちこの指数が負の数や分数などになる場合もあります(底が自然数ではない場合があることはいうまでもありません)。

指数が自然数の場合は単純に指定回数だけ繰り返しの乗算をするとよいのですが、例えば指数が負の数であるとどうなるのでしょうか。「2-3」などという場合、これを日本語で表すと【2を-3回繰り返し掛けなさい】となります。あまり意味がわかりません。具体的にはどのような値になるのでしょうか。これらのような指数が自然数でない場合の計算方法を説明します。

①指数が負の数

指数が負の数になる場合、どのように考えてどのように計算するべきなのでしょうか。たとえば以下のようなときに計算した結果、「α」がどのような値になるかをみていきます。

これまでの話の内容から素直に日本語で解釈するならば【「α」は「3」を-2回掛けた値です。】ということになります。

やはり、正直ピンときません。【-2回掛ける】という計算は具体的にどのように実行するのでしょうか。

結論からいうと、この「α」の計算結果は「1/9」となります。式の変形と計算過程は以下のようになります。

分数の形へ変換。

上記では「3」の逆数の分母を2乗する結果となっています。

この理由としては指数法則から明らかです。指数法則の「am/an」が良いヒントになります。これは「a(m-n)」と変形され、分母の「an」の指数「n」は負の数として処理されました。これを踏まえると指数が負の数の場合は掛けるのではなく割る計算、つまり除算になるということがわかります。

少し強引ですが以下のようなイメージで考えると納得感があるでしょうか。

『「a-n」では、分子分母を「1」つまり「1/1」とおき、これを「n」で指定された回数だけ「a」で割る』

と考えてみてください。少しでも納得感があると幸いです。

②指数が0(ゼロ)

指数が「0」という場合もあります。これはまた、どういう意味になるのでしょうか。結論からいうと、底が「0」を除いたどのような値であっても計算結果は「1」になります。「なぜ?」が頭に浮かびます。

ですがこれも指数法則による解釈で明らかになります。再び「am/an」で考えます。「am/an」は「a(m-n)」と変形することができます。このとき指数が「0」であるということは「m = n」であるということになります。これを踏まえたうえで以下の式をみると、確かに指数が「0」であるとき計算結果が「1」となるということが解ります。

ここで

よって

分母を「0」とすることは数学上禁止されていますので「a ≠ 0」が前提となります。そのうえで「a0 = 1」であることが上の計算過程から証明されます。

③指数が分数

指数が分数で表記されることもあります。「31/2」や「51/3」などの表記になります。【3を1/2回繰り返し掛けなさい】や【5を1/3回繰り返し掛けなさい】という意味です。益々わけが分からなくなりそうです。これらは具体的にどのような値なのでしょうか。

ここでも指数法則から考えてみます。

「(am)n = amn」で考えると指数が分数である数値はどのような性質ものなのかが見えてきます。「31/2」を例にする場合、「a = 3」「m = 1/2」となります。「n」は現時点ではそのままにします。代入すると以下になります。

ここで「n」に指数の分母と同じ値である「2」を代入してみると指数としてはどのようになるでしょうか。とても簡単な話です。「1」になります。「31/2」をもう一度掛ける、つまり2乗したら指数は「1」となり、数値としては底と同じ「3」が得られました。

『こんな話、どこかで聞いたことがある』と思われる人もいるかもしれません。

「1/2乗の数値を2乗したら底になる。」で、ピンときた人もいるのではないでしょうか。そうです。「平方根(2乗根)」です。「三角関数」や「微分積分」と同じくらい忌み嫌われるあの記号「√」です。

例に戻ると、「31/2」は以下のように表現できます。

2乗の場合、正確にはルート記号の前の「2」の表記が省略されていますので以下のように記述する方が正しい表現になります。

「√a」は2乗すると「a」になります。指数の「1/2」は2乗根または平方根と同じ意味になります。

ここで、特に大切なことは、√3の計算結果ではなく、【a1/2は2乗するとaになる数、即ち平方根である】ということです。

では、指数が「1/3」のときはどうなるのでしょうか。これも指数法則を利用して同じように考えると、3回繰り返し掛ける、つまり3乗することで底と同じ値を得られるということになります。つまり1/3乗は3乗根ということになります。表記としては「3√a」となります。

例に挙げた「51/3」は「1.70997594668…」となります。ここで大切なのはこの値そのものではなく、【51/3は5の3乗根であり、3乗すると5になる数】というところにあります。平方根のときと同じです。

ここまでの説明でわかることは、指数が分数で分子が「1」であるとき、指数の分母の数だけ繰り返し掛けると、その値は底に等しくなるということです。このような数を「冪根(べきこん)」や「冪乗根(べきじょうこん)」、または「累乗根(るいじょうこん)」といいます。

ちなみに指数が分数であり、その分子が「1」ではない場合、その数値の示す意味はどのようになるのでしょうか。

例えば「an/m」であれば以下のように表現できます。

単純に「an」のm乗根であるということです。

スポンサーリンク

3.対数

ここまで、指数について説明しましたが、算数(数学)の世界では「加算(足し算)」があれば「減算(引き算)」があり、「乗算(掛け算)」があれば「除算(割り算)」があります。同じように、指数にも相対する概念があります。これを「対数(たいすう)」といいます。

1)指数を逆からみる

対数は指数の対義的な数であると述べましたが、具体的にはどのような数値なのでしょうか。以下をみてください。対数は下のような式で表現されます。

上記を初めて見る人にとっては何を書いているのかさっぱり意味不明なのではないでしょうか。ですがこれ、指数とほぼ同じことを言っています。

式の要素ひとつずつを説明します。上記の「3 = log28」を例にします。

まず「log」という記号ですが、これは「logarithm(ロガリズム)」という正に対数を意味する単語の略号となります。これで対数であることを意味します。その脇に小さく書かれた「2」は「底」といいます。指数の項で出てきた「底」と全く同じ性質のものです。どういうことなのかと思われるかもしれませんが続けます。次に底の右側に書かれた「8」ですが、これを「真数」といいます。この真数は底が繰り返し掛けられた結果出てくる値です。つまり【2の?乗が8】であると言っています。とすると、残った左辺の「3」は指数の項で説明した「指数」にあたります。そしてこれで【2の3乗は8】という意味が完成します。さらにこれを、より対数的に表現すると【2を8にするための冪乗回数は3】ということになります。

指数では底を指数で指示する回数だけ掛けた結果を述べていますが、対数では底が何回繰り返し掛けられたら真数になるかに着目しています。指数とは逆の視点です。

イメージしにくい人もいるかもしれませんので以下に、その関係を矢印を使って記載します。

指数的基準で見ると以下のようになります。

対数的基準で見ると以下のようになります。

上の画像のように底を起点として式をたどると各々の関係が逆回転していることがわかります。このことから指数と対数は同じ「繰り返し掛ける回数」を言っているのですが、視点が違うことにより呼び名が変わっているということがわかります。

2)対数で概数を出す

対数は指数と同じ意味合いを持つ値であるにも関わらず、視点が違うというだけで別の概念として存在しています。これにはなにか理由があるのだとは思いませんか?

利用する価値が指数と同じなのであれば、表現がよりシンプルな指数によって淘汰されそうなものです。

ではその存在意義は何なのでしょうか。答えは「大きな桁数でも近似の値(もしくは概数)を知ることが可能となる」ことにあります。電卓を用いても桁数オーバーとなり算出不能となるような計算でも、対数を利用することで近似値や概数としてではありますがどれくらいの値になるかを比較的素早く割り出すことができます。

ある程度の値については「log101」〜「log1010」を導出できれば筆算でも計算可能です。これらの値は「log102」と「log103」と、後に述べる対数法則を利用して導出可能です(「log107」は別です)。また、場合によっては「log1011」や「log1013」また「log1017」などの値を必要とすることもあります。

「log102」や「log103」の値はその他の値を導出するために頻繁に使用し、学習のうえでの例にもよく出題されます。特にこのふたつの値は記憶していても損は無いです。可能ならば「log107」も記憶または導出できるようにしておきましょう。

以下に「log101」〜「log1010」と、参考に「log1011」,「log1013」,「log1017」,「log1019」の値について記載しておきます。

業務や学習で必要なひとは、このあたりの値を記憶または導出できるようにしておき、後に説明の対数表もいつでも取り出せるようにしておけば備えとしては充分です。式のわかりやすさのためにこれまでの表記に対して右辺と左辺を入れ替えた表記とします。

3)対数法則

対数を利用することによって大きな桁でも近似の値(もしくは概数)を知ることが可能と述べましたが、その根拠が対数法則にあります。以下に重要な対数法則をまとめます。

上記の各法則に大きな桁数での概数算出が可能となる根拠があります。特にひとつ目とふたつ目はその特徴をよく表しているのではないでしょうか。

対数法則からみる対数の特徴は、「掛け算(乗算)」を「足し算(和算)」として、また「割り算(除算)」を「引き算(減算)」として計算可能なことにあります。

さらに、「分数」は「負の数」として、また「指数」は「係数」として扱うことができます。

これが大きな桁数の計算を簡略化できる根拠になります。もちろんこれには対数表などによる換算が必要ではあります。

つまり、最大桁数指定のある電卓で表示不可能となるような大きな桁数の計算は、対数法則と対数表で対応可能であるということになります。

4)実際の計算

対数利用の一例を以下に記載します。如何に大きな桁での計算や表記を簡略化できているのかがわかります。指数で示される値に対して、その桁数および上位1桁目と上位2桁目の算出を目的として各々計算します。

a.真数の桁数算出

まずは真数「6100」というとんでもなく大きな値に対して、これがどれくらいの値になるのかを桁数から算出していきます。以下計算過程です。なお、対数表記内に括弧を付加しているところがありますが、あくまでわかりやすさのためです。

対数表よりlog102 = 0.3010,log103 = 0.4771

対数の計算結果が「y = 77.81」と算出されました。この時点で「6100」の桁数が判明します。「y」は対数の計算結果であり、このときの底は「10」ですので「6100 ≒ 1077.81」であることを示します。底「10」の指数の整数部が「77」となっています。これは「10の77乗」を表現しています。これを誤解を恐れずにいうと、「1」に文字列としての「0」を77個付加することになります。結果、「1077.81」は「78桁」の数値であることがわかります。

更に「10y」がどれくらいの桁数であるかは以下を例に考えるとその根拠が判明します。

上記では、「102」は「100」であり3桁の数値です。また「103」は「1000」であり4桁の数値となります。このことから「10y」は「100.???…~999.???…」の値であり、整数部分が3桁の数値であることがわかります。そしてこのときの「y」は「2 < y < 3」です。同じ要領で「1077.81」を考えると「78桁」の数値であることが判明します。

b.上位1桁目(最高位)の値を算出

桁数がわかっただけではたとえ大まかであったとしても値の判明とはいえません。せめて、最高位の値だけでも知る必要があります。

ここでは最上位を算出してみます。最上位の値が何になるのかについては、先ほど算出した「y」の小数部分に着目します。つまり「0.81」に着目するということです。

「y」の小数部分を「y1」として以下のように比較をするとすぐに最上位の値が判明します。

なお、指数法則の「am・an = am+n」から以下のような分け方が可能であることがわかります。

上記の結果より、上位1桁目の数値の条件が「6.0」を超え「7.0」未満となります。このことから「y1 = 0.81 = log10x1」における「x1」の値としては「6.〇〇〇...」であるということがわかります。よってその整数部分の「6」が上位1桁目の値であるという結果が導かれます。

b.上位2桁目(最高次位)の値を算出

先ほど「せめて最上位の値だけでも」ということから、その求め方を説明しましたが上位二桁目がほしい場合もあるでしょう。そうなると、どのように算出すべきなのでしょうか。

これについては以下のように対数を分割することで算出することになります。

最高位の値は既に「6」と出ていますので「x2」は「60」〜「69」のいずれかになります。

ところがこれを計算しようとすると、いたるところで「log107」や「log1011」,「log1013」などが登場します。また「61」や「67」は素数という、「1」とその数自身の自然数でしか割り切れない値であることから筆算による計算は難航必至です。

このようなときに役に立つのが「対数表」というものです。ここで利用するものは底が「10」の対数における表になることから「常用対数表」ともよばれます。通常「対数表」というと、この「常用対数表」をいいます。

以下は筆者がExcelで作成した常用対数表です。PCや関数電卓があれば常用対数表は不要かもしれませんが、対数表を1枚デスクマットに挟むなどしておけば比較的に素早く概数を算出することも可能ですので表の見方も理解しておきましょう。

上記の常用対数表を利用するに際して、最高位を計算したときの「y1 =  0.81」を利用します。表中で0.81という値がある場所を探します。結果、「0.81 = log10x1」の真数x1は以下の範囲になります。

対数表の見方は後ほどもう一度出てきますのでそちらも参考にしてください。

この場合、「x1」の小数点以下第3位と小数点以下第4位が指定されていないのでこのような範囲をもつ値での算出になります。それでも概数としてはかなり絞られたものになります。

これまで算出してきた値から結果、「6.45 ✕ 1077 < 6100 < 6.61 ✕ 1077 」ということがいえますが、目的とする上位2桁目の特定までは至っていません。

今回の例はすっきりと計算できない(あまり良い例ではない?)値に対しての計算となってしまいました。それでも対数表を利用し、もっと正確な値がほしいという場合はここまでの計算過程に出てきた「log106」をさらに細かく算出する必要があります。そうすることによって、上位桁を割り出すための「y1」が詳細になり、より正確な値に近づきます。

例えば「log102 ≒ 0.301030」,「log103 ≒ 0.477121」が各々算出できていれば以下のように計算することが可能となります。

対数表よりy1を超えない最も近似の値を特定

よって

上位2桁を超えて、上位3桁までを特定することができました。

4)底の変換公式

ここまで、とても大きな値における対数を利用した概数算出方法について説明しました。

そして、これまでの計算にはあるひとつの約束が特に断りなく入ってきていました。それは、底が「10」であるということです。なぜ底を「10」として計算が進められてきたのかの理由としては、桁数を知る上で都合が良いという点が挙げられます。底が「10」である対数の整数部分は(1を足せば)そのまま桁数として解釈することが可能です。次いで小数部分の真数が割り出せれば概ねの値が出るので対数を利用するうえで、底が「10」であることは真数算出において非常に都合が良いです。

ここで多くの人が疑問を持つのではないでしょうか。

「底が『10』以外だとどうすればよいのか?」

筆者も同じ疑問を持ちました。ですが、これを一発解決する方法があります。以下の公式がそれになります。

この公式は「底の変換公式」といわれ、公式内の「b」に入る値は任意の値で構いません。ということは、計算上都合の良い「10」を迷わず選択することも可能となります。

ここではこの公式の証明については割愛しますが、非常に便利な公式ですので覚えておいても損はありません。

底の変換公式を利用することで、任意の底に変換した後は、分数(除算)を減算へ変形する対数法則が利用可能となりますので、そこから利用しやすい底においてこれまでのような計算が可能となります。

5)常用対数と自然対数

これまでの対数における説明で所々に「常用対数」という名が出てきました。これは桁数や値を算出するのに非常に有用なかたちであることがわかります。特に天文学的数値を扱う場合などに真価を発揮します。

この常用対数はこのような名前がついているだけあって特別な扱いをされます。常用対数では、底の「10」の記載を省略することが可能です。つまり「log10a」は「log a」と表記することができます。「log」の記載のあとに明示的な底の記載が無いのであればそれは常用対数として扱うという約束になっています(例外として後述の「自然対数」である場合も存在します)。

いきなり底の記載の無い対数表現を見て戸惑わないようにしましょう。

次いで、対数の特別なかたちに「自然対数」というものがあります。この場合は底が「e」という値になります。表記としては「logea」となります。「e」は省略されて「log a」と表現されることもありますが、先の常用対数と区別するために「ln a」と表記されることが多いようです。

また、ここでいう「e」とは「ネイピア数」といわれ、数値としては「2.718281828…」という無理数です。このネイピア数はそれのみで非常に特徴的な値であり、「e」を底とする指数「ex」は微分しても結果が変わらず、また積分しても積分定数(C)が付加されるくらいで、「ex」に変化はありません。非常に特徴的な数値です。

「オイラーの等式」という式においては「e」を底とし「πi」を指数とする数値についてシンプルな式でまとめられており、数学史上最も美しい数式とまで言われています。

「e」を底とする自然対数を用いることで微分積分などにおける複雑な各種計算が非常に簡単になり扱い易くなるという特徴があります。そのため数学の世界ではこの自然対数が微分方程式などで頻繁に用いられます。その一端が下の積分の式にも表れています。

「1/x」の積分

または

スポンサーリンク

5.指数・対数は理解できて当たり前?

今回、電気の分野でも非常に頻繁に出てくる数学として「指数」と「対数」をとりあげました。この指数と対数は電気を学習するにあたっても、突然何気なく出てきて更に理解できていて当然といわんばかりに数式上に乱立します。

指数はそのような頻度が非常に高く、基礎である電力の公式にでさえその変形式として「P = I2・R」や「P = V2/R」のように突然何の前触れもなく登場します。

対数は電力利得の計算などで突然「『log103 = 0.4771』とする」などの文言とともにそれがどういう意味なのかを飛び越えて現れます。

さも当然のように出てくるこれらは、初見では恐怖の対象でしかありません。せっかくこれまでひとつひとつ丁寧に理解しようとして積み上げてきたつもりのものが、これらのいきなりの登場で一気に崩壊するような感覚に陥れられます。

ですのでこの記事ではそのような恐怖や絶望感をなるべく軽減するために、可能な限り丁寧にかつ必要最低限の情報にとどめることを目標にまとめてみました。これが、皆さんの学習の一助になれば幸いです。