1.タイマーとは
タイマーとは電磁継電器に遅れ動作が付加された部品です。具体的にはコイルに指定の電圧が印加されてもすぐには接点の状態は変わらず、設定された時間の経過をもってはじめて接点が動作するという部品です。
配線のしかたは原則的に小型の電磁継電器と同じ要領ですが、遅れ動作の時間を設定して使用します。この設定を0[s]にすると電磁継電器と全く同じ挙動になります。
これから説明する内容はシーケンス制御の知識を必要とします。特に自己保持回路における知識はこの記事の後半へ行けば行くほど必須となります。ですので自己保持回路についてを今一度確認したい方はこちらから確認されることをお勧めします。
1)コイル接続
これまでサイト内でよく出てきているコイルですが、ここでもその機能や使い方は同じです。こちらも印加電圧は様々です。
2)接点端子
こちらも電磁継電器と同じ使い方、同じ注意事項になります。接点数は多くありませんので同時に何点も使う場合は継電器との組み合わせが必要になります。
3)タイマーでできること
これまでの電磁力を利用した部品では起動スイッチを押すと負荷機器が動き出し、停止スイッチを押すと止まる動作、またその他何かの条件に伴い起動停止をする回路を組み上げるのが可能ですが、タイマーを使うことで更になにが可能となるのでしょうか。
やはりタイマーというくらいなので時間経過に応じて起動や停止ができるということです。
では制御に時間という要素をからめた例を紹介します。
1)長押し操作
2)起動遅延(オンディレイ)
3)停止遅延(オフディレイ)
4)フリッカ(ON/OFF繰返し)
2.タイマーを使用した回路
ここでは、先に紹介したタイマーの使用例をできるだけ実際に使うシーンに近い形で説明します。
1)長押し操作
長押し操作とは、ある決められた時間以上スイッチを押しっぱなしにしなければ操作が効かないということを指します。操作するために長押しを要求するということは機器の誤操作を防止することに大きく役立ちます。
その他には液面を検知するレベルスイッチにおいて、液面の波打ちによる短時間のON/OFF繰り返し(チャタリング)の結果、機器が頻繁に起動停止を繰り返させられ劣化するのを防ぐことができます。
以下の図は上にある図面をより簡略化したものです。この図の書き方をシーケンス回路図といいます。非常に便利で素早く表現できるので是非、こちらの図にも慣れていきましょう。
2)起動遅延(オンディレイ)
起動遅延(オンディレイ)とは起動スイッチが押されてもすぐには対象の負荷機器は起動せず、設定された時間が経過してはじめて起動がかかるというものです。
実用としてはスイッチON後しばらくしてから閉まり始める扉や自動バルブのオープンに対するポンプの時差起動などがあります。
3)停止遅延(オフディレイ)
停止遅延とは停止信号が入力されてから設定時間が経過した後に負荷機器が停止する構成のことをいいます。図では「SW1」がONされ「R1」によりランプが点灯している状態で「SW2」が押されてかつ接点復帰した直後からタイマーがカウントを開始し、設定時間到達にてランプを消灯するという回路になっています。
実用の例としては設備の冷却運転後の停止や照明の消灯を少し遅らせる動作などです。
4)フリッカー(ON/OFF繰返し)
フリッカーとは見出しの括弧書きにもあるように繰返しの動作のことをいいます。特に電気の分野ではONとOFFを一定周期で繰返すことを指します。
実用としては機械設備でのエラー表示のための点滅や信号機の点滅、ブザーの断続音などがあります。なにかを知らせるための動作が多いようです。
ここでは展開結線図のような模式図形式で表現するとかえってややこしくなるので、ラダー図での表現のみとします。
上図は0.5[s]おきに点灯消灯を繰り返す1周期が1[s]のフリッカー回路です。タイマー1とタイマー2の動きをよく追跡してみると点滅動作が見えてきます。
また、R1は点滅動作自体の保持のため、R2はランプを点灯させるための補助リレーです。
6.カウンターとは
カウンターとは電気的なパルス信号(ONした瞬間やONした後にOFFする矩形波の信号)を数え、設定値に到達したらカウントアップ(カウントダウン)の出力をする機器です。
これまでの部品に比べるとより計器らしい外観をしています。
メーカーによって接続方法は様々です。
1)電源接続
カウンターは動作用電源を必要とします。後述の出力機能を持たない表示機能のみのものでも電源は必要ですので必ず取扱説明書や端子部に記載の電源を間違えることなく印加しましょう。
2)入力端子
入力端子部ではセンサーなどの外部機器からのパルス信号を受け取ることになります。
このとき注意すべきは入力できるパルス信号が有電圧なのか無電圧なのかです。また有電圧の場合どれくらいの電圧で受け取ることが可能なのかをしっかりと取扱説明書などで確認な必要です。
3)出力端子
出力端子部では設定されたカウントに到達したときに接点信号として出力が送られます。
電磁継電器の接点と同じような扱いで構いませんがやはり定格には要注意です。
4)カウンターの使い方
カウンターは数を数えることが目的なので、センサーがなにを数えるものなのかに依存します。例えば流量を計測するセンサからの出力信号がカウンターへの入力信号として接続されている場合はカウンタが積算流量をカウントすることになります。つまり入力端子になにを計測するセンサーを接続するかに応じカウンターはその目的を変化させることになります。
上図はONスイッチが何回押されたかをカウントする回路です。そして、カウンター内の設定に到達した場合にランプを点灯させます。例えばカウンターに10[回]と設定しておくとスイッチを10[回]押された時点でランプが点灯するというものです。そして、スイッチ2が押されるとR2を介してこれまでのカウントがリセットされるように配線されています。
7.少しずつ知識を広げる
以上、タイマーとカウンターについて説明しました。図で接続のしかたと挙動を記載していますが、はじめのうちはじっくり眺めてその回路の走り方を理解する必要があります。タイマーに関しては自己保持回路をしっかり理解していればすぐに動作を把握できるタイプのものもあり使いこなしやすいつくりになっているものもあります。もちろん多機能になれば接続も変わります。カウンターに関してはリレーなどとは少し違い計器らしいつくりになっています。電源の供給や入出力をきっちりおさえるようにしましょう。
面倒なように思えますが、各機器や計器の仕様を丁寧に理解していくことが使いこなしの近道です。是非焦らずゆっくりとしかし着実に一歩ずつ前に進んでください!
また、以下の記事では制御に欠かせないセンサーについて、そのなかでもON/OFFで出力をするものについて説明をしています。制御設計や保守保全のスキル幅拡大に役立ててもらえれば幸いです。