絶縁抵抗計〜絶縁性能を知る〜

電気計測
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1.絶縁抵抗とは

短絡と漏電の記事でもこのことについて少し触れていますが、「絶縁抵抗」というのは低圧回路や機器において、電気を通す目的に無い部位が如何に電気を遮断できているかまた電気を遮断できる能力を有しているかを抵抗値として測る指標です。

ところで先ほど、低圧の回路や機器と述べましたが、高圧に関しては測定や判断の方法は無いのでしょうか。まさかそんなことはありませんよね。

高圧については「耐電圧試験」や「絶縁耐力試験」とよばれる最大使用電圧に対する所定倍の電圧を印加して劣化しないかどうかを確認する方法があります。また、あくまで簡易的にですが1000 [V]や2000[V]を測定電圧とした絶縁抵抗測定もあります。くどいようですがこの絶縁抵抗測定はあくまで簡易的判断のための測定となります。

さて、低圧における絶縁抵抗の話に戻りますが、このときの抵抗値は主に大地に対しての値となり、それはすなわち漏電の起き難さの指標となります。漏電は感電や火災と密接に関連しており、これについても短絡と漏電の記事で説明しています。

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2.絶縁抵抗の基準

当然の話ですが絶縁抵抗測定にも基準があります。各々対地電圧により基準が異なりますので以下に記載します。あくまでも低圧の範囲における基準です。

①使用電圧300[V]以下で対地電圧が150[V]以下の場合

絶縁抵抗値基準:0.1[MΩ]以上

②使用電圧300[V]以下で対地電圧が150[V]を超える場合

絶縁抵抗値基準:0.2[MΩ]以上

③使用電圧が300[V]を超える場合

絶縁抵抗値基準:0.4[MΩ]以上

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3.絶縁抵抗計

絶縁抵抗計を使用するにあたって、どのような回路を形成すればよいのかについて説明します。画像はデジタルの絶縁抵抗計(接地抵抗計測定機能含)ですがアナログのものでもデジタルのものでも測定スイッチの表現や形状が違うくらいで基本的な回路形成や操作要領はほとんど同じです。

①測定準備

まずは測定の準備です。なにより対象となる回路の上流側(一次側)に位置する遮断器を開路し、測定対象回路を無電圧状態にしてください。

同時に測定及び準備作業に入る前に回路での使用電圧や機器取扱説明書から印加すべき測定電圧を確認しておく必要があります。測定電圧は使用電圧が300[V]を超える場合は500[V]、使用電圧が200[V]の場合は250[V]、使用電圧が100[V]などより低いものでは125[V]を選択するという要領ですが機器取扱説明書では使用電圧が200[V]でも500[V]を印加するように指定されているものもあります。機器によっては50[V]やそれ以下の測定電圧を要求するものもあり、それ以上の電圧を印加すると機器の破損を招くこともありますので測定電圧の選択には注意してください。

次に非常に重要なこととして接地が確実であるアース端子の選択があります。たとえば樹脂製の分電盤における主幹二次側以降の回路を測定対象とする場合、接地が不確実またはできていない端子を選択しても正しい値どころか絶縁が充分であるという結果を誤って導いてしまい、不具合を見逃すという深刻な誤診を招きかねません。付近にある接地端子の信頼性が低い場合は事前に接地抵抗測定を実施し、その端子が確実に基準内の接地抵抗であることを確認しておく必要があります。

さらに絶縁抵抗計が不具合を抱えていないかどうかも確認の必要があります。これについては電気的に確実に接続されている部分を利用します。いわゆる短絡状態における0[Ω]の確認です。アナログのものであればゼロ調も必要となります。測定器操作としては以降②の実測操作と同様(ただしゼロ調トリマは操作しません)となりますのでそちらを確認してください。

②絶縁抵抗測定

例として樹脂製の分電盤内の回路における絶縁抵抗測定を図とともに説明します。図内の接地線は充分信頼できるものということを前提としています。また、絶縁抵抗計の不具合もないものとしています。

下図のように最上位の遮断器を遮断(開路)してください。上位遮断器が漏電遮断器の場合は遮断するだけでなく二次側配線を離線する方がよいと考えます。これは漏電遮断器の内部回路の破損を防止するためです。このあたりもメーカーによく確認したほうがよい項目になります。

図のような絶縁抵抗計を含む回路ができたら測定スイッチをONしてください。測定スイッチは本体についている場合やライン側のプローブ(リード先端部)についている場合もあります。このときプローブ先端には指定の電圧が掛かっています。不意に触れるとかなり痛いので充分注意してください。

後、数値の安定をもって計測値とします。理想はインフィニティ(∞[MΩ])ですが、つまるところ前述の基準を満たしておれば異常なしと判断します。

最近は多くの絶縁抵抗計でオートディスチャージ機能(除電機能)がついているようです。これは、測定時に印加した電圧により回路内に電荷が残ることを防止する機能です。1000[V]で測定した後に除電されていない回路に触れたときこの残電荷でけっこう痛い思いをすることがあります。オートディスチャージ機能が無い場合は測定回路と接地端子を短絡し除電しましょう。

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4.漏電診断

定期点検では一括で測定し数値を良否判定に使用しますが、漏電遮断器が反応して遮断動作をした場合などの保全で当該測定器を用いる場合もあります。

例えば上記で用いた分電盤のうち回路3が漏電している回路だとします。その場合一括で測定している状態から分岐回路の遮断器を一つずつ遮断(開路)していきます。すると回路3を遮断した瞬間に絶縁抵抗が大きくなります。そして原因は回路3であるということが判断できます。

ただし注意しなければならないのは電磁開閉器などの制御信号により回路を接続するような機器が間にあり、その先の機器(例えば電動機など)が漏電の原因である場合は、その電磁開閉器が電気的に接続されている状態でない限り漏電箇所の発見が困難となります。電気図面(展開結線図など)で検査から漏れている回路が無いかをよく確認しましょう。またやみくもにすべて接続されている状態での絶縁抵抗計による検査で、損傷をうける精密機器が無いように気をつけなければなりません。

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5.接地と共に重要な保安要素

ここまで絶縁抵抗とその測定に関して説明してきましたが、電気保安上は「接地」と同じくらい重要な項目であると考えます。その根拠ともなる説明は、以前にまとめた電気事故に関する記事に明記しています。簡単にいうと、とにかく漏電は人体に直接被害を及ぼすリスクが非常に高いです。自らが設計施工した電気設備や電気機器が自身や他人の命をおびやかすということだけは絶対に避けたいですよね。絶縁抵抗を適切に保つこと及び定期的にその性能を確認し適宜修正していくことは、関係する人々をいわれのない被害からまもることと同義と考えます。「接地」「絶縁」に関してはその測定方法を含めて何を差し置いても真っ先に理解習得したい項目であるとも考えます。

以上、絶縁抵抗計の取扱いについて説明しました。個別の機器や配線での漏電の有無にも役立つ絶縁抵抗計。ぜひ使いこなしてあげてください。

これ一台で絶縁抵抗と簡易接地抵抗の測定が可能です。精密測定コードセット7245Aを揃えれば精密接地抵抗測定も可能となります。