LAN通信に挑戦!
ある設備の増設で設計施工の大詰めのときに体験した話です。
これまでも筆者はPLCやタッチパネルに慣れ親しみハード(実配線やリレー回路,調節計など)のみで構成された制御盤をチャンスがくるたびに予算とにらめっこして可能な範囲でPLC,タッチパネルに置き換えていきました。
改造や増設の多い工場の設備でPLCとタッチパネルの対応力は素晴らしく、ハードのみで構成された制御盤よりもスピーディーに生産要求に応えられます。そんな中、今まで筆者はそれらの機器をシリアル通信という手段で繋ぎ制御をしていましたが、世の中のLANケーブルによる通信技術の発達がすさまじく、生産設備でもしばしばLANケーブルを見かけるようになり筆者も「LANによる通信に慣れていかなければ」と感じていました。
そんな折に再び訪れた増設の計画。制御盤への配線引きの距離がかなりある工事です。
「信号線の長距離配線やシリアル通信でできないことはないが、この先の更なる増設に不利なうえ通信距離も気になるところだな…」
そう考えた筆者はLAN通信での制御設計に踏み切りました。
設計開始!
電気のことはそこそこ知っているつもりの筆者ではありますが、通信は全くの別物でありその知識量は素人同然であることを設計開始後すぐに思い知らされました。設定の方法が手探りでなにをどう設定すればどう反映するのかわかりません。メーカーさんとのやりとり及び取扱説明書のおかげでなんとなくLANの設定も少しは理解できてきたように感じ始めたころには「LANってすごいな。動力以外のことならなんでも簡単にできる。」と思っていました。
現に設計の途中から工事の大幅な簡略化が見込まれ、実際に現場調査にあたった電気工事士さんは「これ、すっごく楽ですね~!!」と、感心の様子。筆者もワクワクしていました。
何度やっても通信エラー
工事も大詰めに差し掛かり、各ユニットの準備が出来上がり、いざ電源を投入しました。
いよいよデータを転送し通信も開始されます。さっそくLANケーブルでPLCとパソコンをつなぎ、データ転送です。接続テストを実行した結果…、「宛先ホストに到達できません」………
「なにっ!?繋がらない??なんで??あんなに準備して不明点も調べ聴きまくったのに…?」
何度やっても結果は同じです。宛先ホストとやらに到達できないと言われます。
「ヤバい、絶対ヤバい…通信できんかったらこれまでの工事も一度もとに戻さなきゃ…無駄に終わるのか?ミッションクリアならず??」
正直パニックでした。明日中に立ち上げないといけないので焦りに焦ってます。これができるができないかは生産にも頑張ってくれた工事士さん達の仕事にも関係してきます。
生きた心地がせぬまま、一旦は生産のために元に戻す段取りをしてその日は帰宅しました。ヘトヘトになっていてもその晩は全く寝られませんでした。
翌日、覚悟を決めて再挑戦。やはり昨日と結果は同じです。八方塞がりかと思っていたら、ふと頭に後輩くんのことが出てきました。
「そういえば後輩くん、以前通信事業の会社に勤めてたっけ。そうだ聴いてみよう!」
そう思いすぐさま連絡しました。後輩くんがいうには「今、電話で聞くだけではよくわからないですけど、そちらに行って実物見たらなんとかなる気がします。勝算はあります。行きましょうか?」
「後輩くん、なんていい奴なんだ!」
是非来てほしい旨を伝えるとしばらくした後颯爽と現れました。
あっさり開通
約1時間程でしたでしょうか。情けなくうなだれる筆者に「出来ましたよ!」との嬉しい報告がきました!!
以下当時の会話です。筆者の通信に関する無知さが露呈しています…
「マジっスか!?どうやって?なにが駄目だった?」
「平たくいうと、どうやらPLC側に通信の条件、つまりIPアドレスなどが設定できてなかったみたいです。…と、いうよりPLCはスタンバイ状態ですらなかったようです。」
「どういうこと?」
「作業内容を説明した方が早いですね。まずPLCをクリーンアップして、一旦USB経由で通信の条件を書き込んでやりました。その後LANでの通信を試したら一発でした。」
「え?USBで書き込むの?」
「そうですよ。LANでの通信をするのですから、その設定は予め通信可能な別の手法で書き込む必要があるんですよ。USBによる通信がその予め通信可能な手段ってとこですね。」
「アンタスゴイよ(心の声、いや漏れ出てた声)!」
後輩くんのファインプレーで繋がった通信により、以降の工事と動作試験は次々に課題をクリアしていき無事立ち上げに成功しました。
LANで通信できるようになってからはその恩恵を余すことなく味わった気がしました。なにより特別な設定無しにHABでPLCにもタッチパネルにもローカルユニットにも接続替えすることなくアクセスすることができる楽さを覚えてしまいました。それとやっぱり早いです。
この事例は自分自身の不勉強と自分の知らない技術の凄さを思い知りました。やっぱりまだまだ学ぶことだらけのようです。特にこれから先LANのことはもっともっと知識を増やし経験すべきです。
学びに終わりなどありませんね。
あと、後輩くんあのときは助かりました。ありがとうございました。