設備制御概要~イメージでとらえる~

制御概要
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1.設備制御の知識

以前、制御についての大まかな内容を制御ってなに?というタイトルそのままの記事で説明しました。

今回は制御の概要を少し掘り下げた形で解説していきます。

皆さんは設備制御という単語を見て、どのような想像をされるでしょうか。簡単に想像とは言ったものの、頭の中でイメージ像を描くにはそれなりの知識も必要になります。

まずは、設備制御をうまく実行するにあたって必要となる特に主要な部品の概略を説明します。もちろんここであげるのが全てではありません。しかし、ひととおりの理解ができるように工夫します。

制御といえる動作は生物(特に動物)の体内でも実行されており、設備や機器の制御は多細胞生物の生命維持のためのうごきとよく似ています。ねらってそうなったのか偶然そうなっていったのか、はたまた図らずともそうなることが必然であったのかは不明ですが、動植物の体内の作用で例えることができます。

ここではより分かりやすく説明することを目的に、人体と比較して説明してみます。

1)電源

なんといっても電源と各種配線の準備が必要でしょう。電源はその名の如くパワーソースとなりますので人体で例えるなら心臓に位置します。

ただし設備では、人体(動物)のようにエネルギーを体内に蓄えて心臓の作用で血液に乗せて送り出すということではなく、電力供給のための設備(受変電設備)から電線を経て制御の主電源としてエネルギーを受け取るという形になります。動物のエネルギー供給については大容量高出力バッテリーを同時に搭載しているということが言えます。

2)電線,配線

制御に使用される配線は大きく電源供給用と信号伝達用に分けられます。電源供給用の配線は径が大きく、大きな電流を通ずることが可能であり発熱にも比較的に強いつくりとなっています。また、信号伝達用の配線は電源供給用のそれと比べると非常に細くなっています。これは導体内に生じる電流が非常に小さいためでありさらに本数も非常に多いことが理由になります。

人体に例えるならば血管とほぼ同等の目的のものが電力供給用の配線、神経に相当するものが信号伝達用の配線であるといえます。

3)電源変換

制御の元電源として受け取った電気エネルギーを各制御機器で使用できる形態に変換する部品も必要となります。

人体でいえば少しはたらき方が違いますが、延髄の部分に位置する心臓血管中枢にあたります。

パワーサプライという部品名でよばれます。直訳したらこれも「電源」となりますが、ここでの電源では主に精密な制御機器へのエネルギー供給を担います。

4)PLC

PLCでは全ほぼての制御を司ることになります。人体でいえば正に脳ということになります。

各種信号にて情報を入手し、内部で設定された条件により振り分けて機器の挙動を決定し、司令を出します。PLCが入手する情報信号を「PLCへの入力(信号)」といい、PLCから出る司令信号を「PLCからの出力(信号)」といいます。

5)タッチパネル

タッチパネルにはインターフェイスとモニターの機能があります。ちょうど人間の顔面の機能と似ています。

運転操作という外部からの刺激を、直接PLCへの入力として発信することが可能で、かつPLCからの出力を直接受取り表示として映し出すことが可能です。タッチパネルを制御盤に組込んだ場合はほとんど全ての運転操作をこのタッチパネルから実行することになります。

6)警報計や調節計,変換器等

各種調節計や警報計,変換器など、制御盤には目的に応じた様々な計装機器が組み込まれ各々その目的に応じた動作を実行します。

これらはちょうど人体内の主要な臓器が各々の目的に応じた動きをしていることと似ています。例えば肝臓では代謝や解毒他、腎臓では血液の濾過のように役割が決まっています。

それと同じように各計装機器には各々に監視し作用している範囲があり、さらに必要に応じてPLC等と信号のやりとりを実行しています。

7)電磁接触器や電磁開閉器

電磁接触器や電磁開閉器は動力伝達機器としては無くてはならない部品です。PLCや調節計を発信源とした動作司令は必要に応じて電磁継電器等に引き継がれ、最終的に電磁接触器等に伝達されることとなります。

その結果電動機(モーター)や発熱体(ヒーター)などが動作を開始したり停止することとなります。

これは脳から筋肉への動作指令を伝達する運動ニューロンに似ています。電子伝達系というシステムを用い各筋肉に電気信号を送ることで骨格筋は収縮し、結果関節を中心に骨格が動作するという一連の動作において運動ニューロンが筋肉に働きかけるように、電磁接触器等が電動機等に動作のきっかけを与えます。

8)電動機等

電磁接触器などのはたらきにより電動機や発熱体に電力が送られるとそれらは動作を始めます。電動機なら回転を、発熱体なら昇温を開始します。

人間の関節が稼働してさらにうまく連動した結果、歩行が可能になることと同様に設備や機器も動作をすることで何かを加工したり移動させたり、また温度を変化させたりと様々な生産活動に寄与しています。制御の目的はこれら各電力使用機器を思いどおりに操作することにあるといっても過言ではありません。

9)各種センサー

各種センサーは操作によるものを除く制御の起点となる信号を発する機器です。

人体で例えると五感に相当します。特に皮膚の機能である触覚によく似ています。もちろんその限りではありません。

リミットスイッチや近接スイッチ、その他温度センサー,圧力センサー,重量センサーなど様々な目的に応じたものが使用され、制御系に起点となる信号を送り出します。センサーは「検出器」や「感知器」などと和訳されることからも人体の感覚器に相当することがわかります。

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2.擬人化模式図

前項でひとつひとつ説明したことを模式図で表現します。

図の左側に人体としての説明を、右側に制御としての説明を注釈として記載します。

もちろん、筆者は医者ではありませんし正確な人体模型との比較というわけでもありませんのでそこは誤解されないようにご注意ください。ですが人体と制御を対比してみた場合、非常に似通った性質が読み取れます。とても興味深いことだと感じましたので皆さんにも共有できればと考え、図にしてみました。

上記の図でみてみると非常によく似ているといえませんでしょうか。

人体には移動する能力が備わっており、設備や機器はものによっては定置で動作するというような根本的な差はあるものの指令や操作に対する出力までのプロセスは似ているといえるのではないでしょうか。

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3.その他の機器

ここまでにとりあげた機器が人体の各機能と似ていることに納得いただけた方もおられると思いますが、これら以外にも人体に例えることが可能な機器が他にも存在します。以下にその例を記載しますが制御も人体も如何にすごいシステムにて成り立っているのかがよくわかります。

1)リレーと脊髄神経

設備機器の制御、特にシーケンス制御に欠かせないのがリレー(電磁継電器)です。リレーは先にあげた電磁接触器や電磁開閉器とほとんど同じ機構で同じ原理により動作していますが使用される箇所に違いがあります。

先の接触器等は主に電力をつなぐ機器であり、一般的に、大きな電気エネルギーを消費して動作する電動機や発熱体などを動作させるための動力の伝達に使用されます。

しかし電磁継電器は主として信号伝達に使用されます。伝達信号の種類としては「1」か「0」の二値となります。つまり「ON」か「OFF」かということです。この二値の信号を主としてPLCへと送り、またPLCからの指令を各末端機器に伝達します。

そしてこの信号伝達の役割は人体でいうならば、脊髄神経に位置します。脊髄の神経系は末端の感覚器などから取り入れた信号を脳へ送り、また脳からの指令を骨格筋などに伝達する役割を担います。

2)レコーダーと記憶能力

制御においては記憶や記録も大切な動作のひとつとなります。なにか異常が起きた時に解析をするにあたって、当時なにが起きたのか、なぜそうなったのかを遡って追いかけることはこれから先の操作動作の重要な決定指針となります。仮に異常が起きていたわけではなくとも、制御において正常に動作しているかどうかをフィードバックするためにはこれまでの記録が必要となります。

これを忠実に記録して保管しているのがレコーダなどの記録媒体となります。

人体でいえば、脳内の海馬や大脳皮質などになります。人間もこれまでの過去の事象にならいこれからの行動指針を決定することが非常に多くあります。さらに言語を理解し記憶することで他社との意思疎通を可能としてより高度に発展します。記録や記憶がとても大切なファクターであることはいうまでもないでしょう。

3)プリンターと記述能力

制御における大切な機能として放置するわけにはいかないのが記録の出力です。これはリアルタイムでも遡りであっても、そして媒体が紙面であっても電子データであってもこれらの記録を他者へ開示しなければならない場合があります。このときに活躍するのがプリンターなどの出力機器です。もちろんプリンターにとどまらず電子データによる記憶媒体も同じです。制御上必要に応じてではありますがプリンターなどが搭載されることもしばしばあります。

人体に例えればこれは音声や記述による発信能力と同等であると考えます。発声と言語で本人の意思や経緯などを直接他者に伝達したり手を動かし記述することで書面を通じて何かを発信することと同義であるといえるのではないでしょうか。

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4.PLCを介しない制御

これまで制御の中心がPLCすなわち人体でいえば脳が中心であることを述べてきました。しかし、場合によっては必ずしもPLCを介さずとも制御が成立するときがあります。顕著な例としては単一のファクターにおける制御の場合です。例えば温度制御において設定値以上に対象の温度が上がりすぎたら昇温動作を停止し、設定値未満で再度昇温を開始するなどの場合は調節計のみで完結させることが可能です。それ以外では非常停止が入力されたら電源系統ごと電力を遮断することで危機を回避する制御もPLCを介さずに成立します。

人体では極度に高温のものに触れたときに無意識にかつ高速で手を引く動作や膝蓋腱反射(膝を叩くと脚が跳ねる反射)などの脊髄反射といわれる反応がこれと同様であり、これらは防衛目的の反応であるといわれています(膝蓋腱反射がどのように防衛に役立っているのかについては筆者はわかっていません)。

制御においても先の非常停止回路などは機器や設備の保護が目的となりますし、警報計から発せられたアラームに対する反応をPLCを介さずに組み込むことがあります。緊急を要する動作についてはPLCをショートカットする場合があるということですね。

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5.イメージの大切さ

以上、制御をイメージでとらえるための説明をしてきました。筆者なりに工夫をして生物(主に人体)と比較して説明をしてきましたが皆さんの理解の役にたてていれば幸いです。

物事を理解しようとするときや、なにかをつくりあげようとするときはひとつひとつの本質を理解することももちろん大切ではありますが、まずは俯瞰的に観察しイメージに落とし込むことも非常に重要な作業となると筆者は確信しています。イメージが湧いているかどうかはその後の進捗速度に大きく影響します。もしイメージが本質と乖離していたなら早々に修正すればよいだけであって物事を俯瞰的にみることが大切であることに変わりはありません。

もちろん、イメージに固執し本質の訴えに意識を向けないのであればそれは「執着」であり正しい理解には至れません。そのことに注意し広い視野で観察することができればあらゆる事象の理解は早まると考えます。

この記事が皆さんの理解の助けになることを願います。

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【やさしく解説する電気】受電から制御まで