プレス機動作不能〜PLCエラー〜

電力と制御の体験記

1.気になった

とある製造班でたまたま停止作業を見た日のことです。

プレス機本体およびその制御盤の電源を週末毎に遮断して帰っていたようなのですが、その遮断のしかたは、油圧ポンプを含む回路をナイフスイッチで主電源から「バシッ!」といくやりかたでした。

初めてそれを目にしたときは、「(え?マジで!?)」と思い、班長さんに「油圧ポンプなどの(電気的に)大きなものの停止を確認した後に制御盤の中の小さなブレーカから順に切っていってもらえませんか?」とお願いしました。

合わせてナイフスイッチが負荷遮断用ではないことからくる「アーク」のリスク、主幹のみで入り切りすると場合によっては大きな「サージ」の影響で精密機器が壊れる可能性があることをなるべく専門用語を省き丁寧に説明するつもりでした。

2.文句あんのか?

ところが班長さんの反応は辛辣なものでした。筆者のお願いの言葉にかぶせるように「あ?何?文句あんの?こっちは毎日の生産で疲れとるのに、んなことにいちいち構ってられるか!面倒なんだよ!」と、まるでとりつく島もありません。

そこで筆者は、生産管理担当に「制御盤の主幹のみでのON/OFFはなるべく避けてほしい」こと及び「切るときは小さなブレーカから切り、入れるときは大きなブレーカから入れてほしい」ことを説明しました。もちろんその際の保護具の着用も必須事項として。

すると管理担当からは「では、takuさんの方でどのように遮断していけばよいかを資料にまとめてくれませんか。」との回答があったため、早速写真付き資料をまとめて提出しました。

3.現場説明

管理担当に資料提出すると次に「各現場にこの説明をして回ってください。」とのこと。

少し「(この人やる気なさ過ぎなんじゃないか。)」とは思いましたが、場内で的確な説明ができるのは現時点では自分しかいないということもあり、ひとまず各現場へ説明しにいきました。

ほとんどの現場では班長さんと班員の皆が「はぇ〜、そんなこと知らんかった…」や「そういえばブレーカ切ったとき火花見えることあるもんなぁ!」など真剣にきいてもらえている様子がうかがえました。特に真剣な職場からは各装置を指差し「あれは?これは?あの場合やこの場合は?」など質問が飛び交いました。

ただし、例の職場を除いては…

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4.やっぱりできない

一抹の不安を残しながらも、ひとまずは伝わったはずと自分にも言い聞かせてその場を後にしました。

しかし直ぐに甘かったことを認識しました。

あの例の職場の班長がまた主幹のナイフスイッチで「バシッ!」とやっていたのを目撃してしまいました。

筆者は駆け寄り、班長に「お願いですからこれはやめてあげてください。」と頭を下げましたがやはり反応は「うるさいな!じゃあ毎週おまえがやれよ!!」という始末。

既にルールとして成り立ち他の全ての職場で守ってもらっていることに対し、この職場のわがままだけ通すわけにもいかず、なんとか納得してもらえるように説明をしたつもりでした。

班長は「言いたいことはわかった。」と言っていました。

筆者は「(「言いたいことは」とは?おそらく伝わっていない。これから先もこのルールを守ることはない。何かが起きる前になんとかできないものか…何も起きなければそれにこしたことは無いが…)」と思いましたが直ぐにこれといった打開策がありませんでした。生産課長への相談もしましたが頑として聞かない状態は続いてしまいました。

5.結果

それからニヶ月ほど経った頃でしたでしょうか。筆者のところに「プレス機がうんともすんともいわない。全く動かない。」と連絡がありました。

「(あ〜、きちゃったのかな。きちゃったんだろうな。)」と思いました。

現場へ到着し制御盤内をみると、ありました。PLCのCPUエラー。「ERR」のLEDが点滅しています。当時PLC保守開発ツールを持ち合わせていなかったこともあり直ぐに装置メーカへ連絡し、事の顛末を説明したところ装置メーカからは「あ〜、そういうことでしたら多分ダメかもしれません。PLCの更新を余儀なくされる可能性が高いです。」とのこと。

その後駆けつけた装置メーカの担当者はPLCにつないでエラーコードを確認後「PLCメーカに修理で出すか更新するかの二択です。でも、修理可能かどうかは不明です。更にできたとしても修理も更新も同じくらいの時間が要るでしょう。」と回答しました。

生産課長は更新を選択しました。

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6.一ヶ月停止

プレス機は一ヶ月間稼働できませんでした。その間の生産はプレス加工だけを外注することで凌ぎましたが収益は大幅減と聞きました。

班長は課長と工場長から大目玉をくらい、ルールこそ守るようになったもののしばらくヘコんでいたとのことです。

ただ筆者が思ったことは「(申し訳ないがPLCの破損で済んで良かった。ナイフスイッチのアークなどでもっと大きな損失が出なくて良かった。丁度いいお灸になるなんて運が良い。)」でした。

7.人と機械

設備は融通がきかない分素直だけど、人は融通がきく分拗れたら厄介だと痛感しました。

しかしながらこの事例から学び取ったのはこれくらいで、筆者は人との接触方法の絶対的な正解をまだ知りません。この場合もたぶんもっと理解の得られる方法があったのかもしれませんが、未だああしておけばよかったとかこうして説明したらよかったなどの答えも出ていません。

もし、この答えをご存知の方が居られたら教えて頂きたいです。

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