1.電気の作業に必要な工具
趣味で電子工作をされる方にも仕事で電気工事をされる方にもなにか手を動かして作業するには道具が必要です。でも、なにをどう揃えればいいのかよくわからない方やたくさんあり過ぎでどの価格帯のものを用意すればよいのかわからない方もおられると思います。
そうでなくても今使っているものより使い勝手のいいものはないかを探されている方もいらっしゃるでしょう。
そんないろんな方のために今回はいくつかの工具を紹介します。
実はこの記事を書いている最中ですが、筆者が使用していたり前から欲しいと思う工具を調査しながらテンションが上がっています。なぜかわかりませんが、工具を選定しているときは時間が過ぎるのが異常にはやいですね・・・
いずれにしてもこの記事が皆さんの大切な相棒となる道具の、導入におけるヒントになれば幸いです。
とはいえ、ここでは説明紹介しきれていないものもありますので周りの方の意見やWEB上の他の情報を調査することも有効です。
1)ドライバー
電気工事や電子工作に限らず広く使用される工具です。そのような工具は数あります。プラスとマイナスが存在することも皆さんよくご存知かと思います。プラスドライバーにもマイナスドライバーにも番手がありネジの大きさに合わせて使用します。この番手はドライバー先端の太さを表しています。0番からあり、数字が大きくなればドライバー先端は太くなります。
よくある失敗で大きめのネジに小さい番手のドライバーを使用してネジ頭の溝をつぶしてしまうということがあります。「ネジ(山)をなめた」といいますね。
ドライバーで最も使用する番手は2番と考えておいて差支えないでしょう。しかし、他の番手のものを使用する可能性も充分ありますのでプラス,マイナスともに1~3番までそろえておくとだいたいの作業で困ることはありません。
ビットというドライバーの先端部分だけを交換し、リサイズすることで使用するタイプのものもあります。携帯性や経済性でそれらを選定するひともおられるようです。
2)ニッパー
比較的細めの配線や結束バンド、また樹脂材の角などを切断加工する際に使用します。電気作業では頻繁に登場する切断系工具です。
ニッパーの種類も豊富で、太めの単芯線を切断できるような大きめのものから、プラモデル組立や電子工作向きの精密な切断が可能な小さなものも存在します。前者は銅線ニッパー、後者は精密ニッパーなどとよばれます。
また、刃先の形状も様々あり、大きく分けて両刃のものと片刃のものがあり両刃のものは鋼線など金属系の固いものの切断用、片刃のものは銅線や樹脂材などの柔らかいものの切断用という使い分けが一般的です。また切り口の処理状態が変わります。前者は切り口が山形に、後者は平らになります。
3)ペンチ
ペンチは挟んで力を加え曲げたり、引っ張ったりするための工具です。また、アゴの根元に刃が備わっているのが一般的でここでは比較的固い線材などを切断することも可能です。
ものを掴む際に大きな力を加えられるので力を必要とするシーンでは心強い味方になります。
「掴む」「曲げる」「切る」が備わった工具です。
4)ラジオペンチ
先に紹介のペンチに比べ細かい作業に適した工具です。
ペンチ同様「掴む」「曲げる」「切る」を得意とする工具ですが、アゴが長く先端も細くなっています。そのため掴むための力の伝わりかたこそペンチには劣りますが、その分細く長い先端のおかげで細かい掴み作業にも対応しやすくなっています。
ラジオペンチも種類が豊富で先端が少し曲がったような形で更に細かい作業を想定したものやアゴにギザのあるもの無いもの、先端がもっと細く長くなったものなど様々です。
5)レンチ,スパナ
六角形の頭のボルトやナットを回して締め付けたり緩めるための専用工具です。ボルトやナットを横から咥えこむようにホールドできるオープンエンドタイプや囲い込むようにホールドするメガネレンチがあります。
モンキーレンチもサイズが自在な六角ボルトナット用工具です。
レンチ,スパナもやはり種類は豊富です。スタンダードなスパナからオープンエンドのスパナとメガネレンチを組み合わせたコンビネーションレンチやラチェットの機能が備わったラチェットレンチ、ソケットビットでボルトナットをホールドするソケットレンチなど様々です。
六角形のもの専用ではなく配管専用のパイプレンチというものもあります。
6)ケーブルストリッパー
電線やケーブルの被覆をはぎ取るための工具です。ニッパーでも頑張って被覆を剥離することはできますが非常に作業効率が悪く、また手指に切り傷を負う危険が大きいです。
そこで登場するのが被覆剥ぎ取り専用の工具であるケーブルストリッパーとなります。
これにも豊富な種類があります。ペンチのような形状のものがスタンダードで、電線やケーブル断面積に応じ円形の刃のどこを使用するか判断し、その部分で電線などを挟んで被覆のみを切断剥離するという使い方になります。レバーを握るとワンアクションで電線やケーブルの被覆をはぎ取れる便利な仕様のものあります。
しかし、電線が100[㎟]など極端に太くなると使用工具はガラリと変わるようです。筆者は100[㎟]以上の配線被覆剥離専用工具はお目にかかったことはありません。こういった場合はよほど作業量が多くない場合、電工ナイフが多用されているのではないでしょうか。そういう意味では切れ味のよい電工ナイフも必須の一品ですね。
7)圧着ペンチ
配線接続のための材料加工器具です。その名のとおり圧力で配線を固定(圧着)し接続します。業界用語的にこの作業を「かしめる」といいます。スリーブや圧着ピンなど接続材料に応じた種類があります。
注意しなければならないのはスリーブかしめを目的とした圧着ペンチには絶縁被覆付きスリーブと絶縁被覆無しスリーブが存在しそれに合わせて圧着ペンチを選ばないとならないということです。いくら接続可能だからと被覆付きのスリーブを被覆無しスリーブ用の圧着ペンチでかしめてしまうとせっかくスリーブに備わっている被覆の絶縁性能を破壊してしまいます。
また、絶縁被覆の無いスリーブなどをかしめた後は別途絶縁処理を忘れないように注意しましょう。
8)ハンダごて+ハンダ
圧着ペンチ同様に配線接続などを目的とした工具です。ですがこの場合は熱をもって「はんだ」という融点の低い金属を溶かし配線接続部に流し込み、その後放熱冷却により固めることで接続を完了するという作業に用います。配線どうしのみではなく基盤への部品接続にも多用されます。はんだ付けはどちらかというと、この基盤への接続作業が多いのではないでしょうか。この作業を「はんだ付け」といいます。
接続部は金属の充電部がむき出しになりますので必要に応じ絶縁ビニルテープや収縮チューブでの絶縁処理を考慮する必要があります。
はんだによる接続作業は電熱を利用しますので、どの部分が高熱になるのか充分理解し、やけどしたり火事をおこしたりしないよう注意して作業しなければなりません。
2.セットで揃える
上記では電気作業での主だった工具を説明紹介していますが、これらをひとつひとつ丁寧に選定し購入するのは手間もかかり費用も高額になりがちです。まだ経験が深くなく作業内容と工具の使用方法を覚えるのが先だという方はセットで選定してしまうのも一つの手段です。一回の選定作業で主要な道工具が揃いますので楽ですね。
「電気工事用」や「電子工作用」などで調査するとその目的に応じたセットが必ず出てきますし、セット購入は比較的ではありますが安価に済ませることが可能です。
とにかく早く道具をそろえなければならないという場合はこういった方法を選択するのも有効です。
3.手になじむ工具を
工具類は趣味や仕事問わず目的の作業を進めるための大事な仲間であると筆者は考えています。ですのでこれらを丁寧に正しく使用しなければならないのはいうまでもありません。
そして、ご自身の技が上達するとともにそれに見合った上質な工具を選定していくのも高いクオリティを発揮するのに必要なことと考えます。初心の頃はなるべく工具類にかける費用を抑え自身の腕を磨くことに重点を置き、その後熟練していくと工具が腕に追いつかなくなるでしょうから、より上質なものをそろえていくといった具合に考えるのが自然ではないでしょうか。
工具類が人間の腕に追いつかなくなるということの一例としては熟練により作業処理速度が上がり単位時間が短縮され圧倒的な数をこなせることで工具側の劣化が目立つというようなところでしょうか。
「道具はいいものを揃えなさい」という言葉もよく耳にしますが、道具だけがハイレベルなのも腕だけがハイレベルなのもバランスが悪いと思います。それが仕事としてならなおさらです。ご自身と道具がともにレベルアップしていきどこかのタイミングで「これっ!!」という道具に巡り合いそれを長く使用していくのが理想ですね。
また、工具類とともに合わせて揃えておきたいハンディライトなどの照明機器についても紹介記事をまとめています。合わせてご覧ください。