1.シーケンス制御とは
このカテゴリでは様々な制御の代表例でもあり自動化には欠かせないシーケンス制御に関して順次説明していきます。
まず、シーケンス制御とは以下のようにJISで定義されています。
あらかじめ定められた順序または手続きに従って制御の各段階を逐次進めていく制御
やはり固い表現ですね。上記引用文を噛み砕いて説明いたします。
〔目的に向けて、もともと用意された設定やプログラム内で合否判断を繰り返し条件の分岐に従い対象を操作する制御〕
これは筆者が日々シーケンス制御と向き合う中で自分なりに行き着いた表現です。JISの表現でしっくりくるひともいれば、筆者の表現でしっくりくるひともいるでしょう。ただ、どちらも言っていることの共通点は「あらかじめ(もともと)定められ(用意され)ている」制御です。
これの意味するところは配線で構成されていようと専用のプログラムで構成されていようと一つの目的に向かった設定が、想定される局面や段階においてあらかじめ用意されているということです。
2.もっとも基本的な回路
下の図をご覧ください。これは電気回路の基本中の基本となる回路です。広い意味ではシーケンス回路の基本とも言えます。
あくまでここではシーケンス回路についてを説明していますのでシーケンス制御を説明するように解説してみます。…といってもこの回路では電気回路視点でもシーケンス回路視点でも説明は一緒になりますが。
非常に単純です。
①スイッチを入れる
②ランプが点灯する
以上です。
回路を構成する要素が少ないのでこのような表現になりますが、これをシーケンス制御の最小単位とお考えいただいて結構です。
これでも先の「あらかじめ(もともと)定められ(用意され)ている」制御の概念に立派に則っています。スイッチをONにするとランプが点灯するように設定されているのです。「逐次進める」段階が2段階しかありませんが。
ただし、ここですでに登場する大事なことを述べておきます。
上の回路で「スイッチ」と出ましたが回路用語では「接点」とよばれることがスタンダードなようです。もちろんスイッチでも通用します。そしてこの接点には2種類あり、一つ目は「a接点」でもう一つが「b接点」です。
1)a接点とは
a接点とは、何もしなければ電気的につながっていない接点のことをいいます。人が押すことや電磁力で引き付けられる(後述しています)ことではじめてつながる接点のことです。
2)b接点とは
b接点とは何もしない状態ですでに電気的につながっている接点のことです。そしてa接点とは逆に、人が押すことや電磁力で引き付けられることで電気的なつながりを失う接点のことです。
3.リレーシーケンス
シーケンス制御の概念は上記にて説明がつきますが、これじゃああまりにも呆気なさすぎますのでもう少し説明を続けます。
大まかにシーケンス制御の概念をとらまえたところで「これぞシーケンス制御」というものを説明します。先の、スイッチを押すとランプが点灯する回路はたった2段階の制御になりますが。これは自動制御とはかけ離れています。そこで登場するのがリレーです。制御の世界におけるリレーとはどんなものか、決して運動会の話ではありませんが運動会のリレー競技と概念は似ています。
1)リレーとは
図で説明した方が早いですね。
上の図は一般に「マグネットスイッチ」や「マグネットリレー」または単に「マグネット」などと様々な名称で呼ばれているリレーの一種です。日本語では「電磁継電器」といいます。この他にも「ミニチュアリレー」や「補助継電器」などありますが部品の配置やサイズが多少違うだけで動作原理はほぼ一緒です。ただし、接点容量や接点抵抗などというどれだけの電気を流せるかという違いはありますのでご注意を。
a接点に視点をあて動作を言葉で説明するとまず ①何もされていない状態なのでばねの押し上げる力のためにa接点は電気的につながっていない → ②リレーのコイル部分に電源が投入されることでコイルが電磁石化 → ③磁石化したコイルの磁力がばねの押し戻す力に打ち勝ち可動接点のユニットが引き寄せられる → ④リレーのa接点が電気的につながる → ⑤各a接点につながる回路が動作する
ということです。
b接点なら動作が真逆と考えてください。
ミニチュアリレーの場合はc接点という、a,b接点の片側をつなぎ、どちらの接点使用時にも接続をする接点(端子)が存在します。これは「コモン(common)」とよばれます。
このリレーの動作により例えば電池のような電圧の低い直流の電源をコイルに接続し、a接点につながる交流の100[V]を必要とする機器を動作させることなどが可能となります。まさにリレー競技でバトンタッチするようですね。
2)自己保持回路こそがポイント
では、リレーの構造もわかったところで「The・リレーシーケンス」の話に移っていきましょう。これも図で説明した方が早そうですが、ここでひとつお願いです。
これ以降リレーやランプ、スイッチなどを図記号を利用する形ですすめさせていただきます。上図はいずれも筆者が直接ひいているものですが、毎回詳細を記載していると非常に説明も煩雑になってしまいます。
そこで、電気電子業界で使用されている図記号を利用したいと考えます。
それにより「図面」といわれるものの素晴らしさも同時に実感していただければなお当サイトの価値も出てきます。都度、図記号が何を表しているかは説明いたしますのでよろしくお願いします。では本題へいきましょう!
言葉でいろいろ説明するより図面が一目瞭然ですね。上の図がThe・リレーシーケンス、「自己保持回路」です。ちなみに緑色二点鎖線の枠に関しては、図面上では離れ離れになっているコイルと接点が機械構造としては一つのものであるということを分かりやすさのために囲って表示しただけのものです。通常の図面ではこの囲い枠は記載しません。また、電源記号もわかりやすさのため記載しましたが通常はこのような図面では電源の図記号による記載はありません(文字表示に留めるのが通常です)。
先ほどのリレーの構造図を確認しながら上の図面の動きを説明します。
順序よく行きましょう!では!
①ONスイッチを人が押す
②リレーコイルに電気が供給される
③リレー接点(1)とリレー接点(2)がONになる
④ランプに電気が供給され点灯する
⑤人がONスイッチを押す動作をやめる
⑥ONスイッチがもとの位置に戻る(ONスイッチ部分は電気が通らなくなる)
⑦ONスイッチ部分は電気を通さないがリレー接点(1)がリレーコイルに電気を供給し続ける(ここが自己保持部分です!自分で自分を保持しています!!)
⑧リレー接点(2)もON状態なのでランプは点灯を続ける
⑨OFFスイッチを人が押す
⑩OFFスイッチはb接点なので押された時点でリレー接点(1)からの電気の供給を遮断する
⑪リレーコイルに電気の供給が無いのでリレー接点(1)とリレー接点(2)はOFF状態に戻る
⑫ランプが消灯する
⑬OFFスイッチから人が指を離してb接点が戻ってもリレーコイルに電気を供給できるルートはないのでリレーはもちろんランプが動作することはない
⑭再び①から始めれば繰り返すことが可能
以上が自己保持回路の動作メカニズムになります。
4.自己保持回路の理解は必須
ここで説明をしました「自己保持回路」ですが、これから自動制御について説明をしていく中でとても重要なポイントになります。算数でいえば1桁の足し算と同じくらい基礎で、これをキッチリ押さえなければ以降の四則演算が理解できないように、この後の制御の話には進めません。
自己保持回路の理解には二つのポイントがあります。まずはリレーの構造についてです。さすがに製作できるほどでなくてもよいですが動作の原理をしっかりおさえておきましょう。実物からでもよいですが、上記の3.1)にある説明やミニチュアリレーなどの仕様書にある構造図からその動作を理解するのが早いのでないでしょうか。そんなに難しい動作原理ではないので是非挑んでください。次に自己保持回路での電気の流れについてです。これも上記の3.2)で説明していますがこちらは図面とともに是非実物の動作で理解するのがよいと考えます。リレーはどこからでも簡単に手に入ります。短絡や感電に注意しながらではありますが実際に回路を組んでみるのは何より効果的な理解習得の方法となります。
是非、モノにしてしまいましょう!
制御について学びたいけど何から手をつけていけばよいのかわからないという方のために、自動制御の代表であるシーケンス制御についてどのように習得していけばよいかという視点から、現在筆者が最も有効であろうと考える手段を以下の記事にまとめました。このサイトの制御の項目で基礎的なことをおさえたならば、さらなる飛躍として一気に実用レベルへ引き上げるための有効な手段は何かについて記事で説明しています。