スイッチロック〜自己保持回路の利用〜

リレーシーケンス
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1.自己保持回路でつくる

以前に自己保持回路を利用して電圧増幅の回路を図面上で組み説明しましたが、今回はまた別の実用例をあげたいと思います。

今回取上げるのは自己保持回路利用によるスイッチロックシステムです。三つのスイッチのON入力順番や組合せで解除できるシステムを組上げてみます。

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2.ロック機構とシステム構想

先ずはシステムを考える前のロック機構についてイメージを説明しておきます。

これまでも制御におけるシステム構築の話はしていますが、その中で「構想」が大切であることを述べています。装置や設備が複雑化するほどにこの構想が大事になってきます。この構想が定まらないままで機械や電気,制御の設計に入り組上げようとしてしまう場合、設計中の不明点が多く発生し時間を無駄に浪費し、更に無理やり設計製作したものになるので「思ってたのと違う」ということが多く発生し、結果的に更に時間とコストがかかるということになってしまいます。ひどいときは全く使い物にならない場合もあります。逆をいうと構想が定まったものに対する設計や製作では途中費やする時間の無駄が省かれ製作したものも「思ったとおりのもの」に極めて近く、致命的な欠陥が非常に発生し難いものとなります。

ここで取上げる例は構想としては簡単なものとなりますが、動作の様子とルールをきっちり決めておこうと思います。以下は構想の図とその説明になります。

ロック機構の主部品として「ラッチングソレノイド」や「ソレノイドロック」とよばれる部品をロック機構として使用します。ラッチングソレノイドは通電でロッドが後退しストライク(ロッドが入る穴)から脱出することでロックが解除できるという仕組みにします。

ロック解除の条件は三つのモメンタリ動作スイッチ(押すことをやめたら復帰する接点)を決められた順序で押した後に「解錠/リセット」スイッチを押すことによるものとします。通電有りで解錠(構想設計上とても大切です)という仕組みです。

解錠と施錠の約束は次のとおりです。

①ナンバースイッチ(SW1〜3)の並び替えで解錠条件を揃える。今回は「SW3」「SW1」「SW2」の順番が解錠の条件となる。

②解錠条件が揃ったら「SW0」を押すことで解錠を実行する。

③最初の「SW3」が正解しても次に「SW2」を選択するとリセットされてしまう。

④「SW3」「SW1」「SW2」と揃っていても「SW0」を押さずに1〜3のナンバースイッチを押すと解錠せずにリセットされてしまう。

⑤再施錠は解錠状態で「SW0」を押す。

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3.制御設計

構想も立ったところで制御設計に入ります。

以下、「入力部」「制御部」「出力部」と分けて図面を作成していきます。図に対する説明を文章で書き加えていきます。

1)入力部

先ずは入力部の図面です。

動作は単純で「SW1」導通(電気的につながることです)で「R1(リレーコイル1)」が、「SW2」導通で「R2」が、「SW3」導通で「R3(リレーコイル3)」がONになる(励磁されるといいます)動作です。

解錠用スイッチである「SW0」も基本的には同様ですが、このスイッチは再施錠にも使うので他と比べて少し動作が複雑になっています。

この動作は一つのスイッチを繰り返し押すことで出力を交互にON,OFFするという「ビット反転回路(オルタネート回路)」の考え方の一部を利用しています。ビット反転回路については一般的な回路~シーケンスの常用回路~で解説していますので参考にしてみてください。

2)制御部

次に制御部の図面です。

制御部は図が二つあり、一枚目はナンバースイッチによる解錠条件を、二枚目は操作の強制的なリセットについて記載しています。

一枚目の図を簡単に説明すると、ナンバースイッチを「SW3」「SW1」「SW2」と押すと次々に自己保持が成立していき、最終的に「Rd」が励磁されるように組まれています。

具体的には以下のように動作します。

①入力部で「SW3」が押されたら「R3」を介し「Ra」コイルが励磁され自己保持し、次の行の「Ra」a接点が導通する。

②「Ra」a接点が導通状態のとき入力部で「SW1」が押されたら「R1」を介し「Rb」コイルが励磁され自己保持し、更に次の行の「Rb」a接点が導通する。

③「Rb」a接点が導通状態のとき入力部で「SW2」が押されたら「R2」を介し「Rc」コイルが励磁され自己保持し、更に次の行の「Rc」a接点が導通する。

④「Rc」a接点が導通状態のとき「解錠(SW0)」が押されると「Rd」が励磁される。

二枚目の図を簡単に説明すると、解錠操作(「SW3」「SW1」「SW2」と押す操作)が終わらないうちに「SW0」を押した場合、また解錠操作条件から外れてしまった場合などでこれまでの操作がリセットされてしまうように組まれています。更に、解錠後の再施錠接点もここに組まれています。

具体的動作は以下のとおりです。

①ナンバースイッチ操作により「Rc」コイル励磁まで至ってないときに「SW0」が操作された場合は、「R0」を介して「R10」コイルが励磁され、制御部1の「Ra」自己保持回路が遮断されるので、「Ra」〜「Rc」までの自己保持が解除され、リセットに至る。

②入力部での再施錠操作(解錠状態で「SW0」を押す)により「R0-1」が入ることで①のときと同様に全リセットされる。

③「SW3」を押した後に間違って「SW2」を押した場合は、「R11」コイルが励磁され制御部1の「R11」b接点が開き「Ra」コイルの自己保持回路を遮断することでリセットとなる。ただし「SW3」「SW2」が入力され、「Rb」コイルが励磁されている場合はこの回路では「Rb」b接点が開いていることで「R11」コイルは励磁されない。

④「SW3」「SW2」「SW1」と入力され「Rc」コイルが励磁らせれているにもかかわらず、さらにいずれかのナンバースイッチが入力されたら「R12」コイルが励磁され「Ra」コイルの自己保持回路を遮断し、これまでの入力はリセットされる。

3)出力部

出力部の図面です。

出力部は最も単純にしています。「Rd」コイルが励磁しているかしていないかのみをみている回路になっています。

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4.自己保持回路の理解で自由自在

以上、リレーシーケンスの自己保持回路を利用したロックシステムの設計でした。これを応用することで解錠の難易度はいくらでも操作できます。例えばスイッチ数を増やすことで難易度を上げたり、スイッチ数はそのままでも桁数(入力回数)を増やすことでいくらでも難しくできます。

自己保持回路の理解が深まることで制御のパターンも利用方法も無数に膨らみます。この非常に単純な部品が多くの機器や設備の動きを支えているといっても過言ではありません。リレーという部品の性質を知ることは、自動制御や電気回路,電子回路を理解する上で欠かすことができないと言えるのではないでしょうか。

自己保持回路と一言にいっても、その応用幅はとても広そうですね。

世界最軽量はFMV!