PAS(PGS)は最後の砦~責任分界点としても~

受電・変電

1.最後の砦としてのPAS(PGS)

皆さんがお勤めの職場や休日にお出かけの色々な施設(ショッピングモールや遊技場など)では大量の電力を使用している場所が多数存在しています。このような建造物などでは高圧以上の電圧で、さらに数種類の安全施策が採用された設備により電力供給されています。

この数種類の安全施策、言い換えれば電気事故時の「保護」ということになるのですが、これらの最後の砦となるのが主なものとして「PAS」や「PGS」などとよばれる機器になります。

PASの「AS」は「(高圧交流)気中負荷開閉器」として知られ、PGSの「GS」は「(高圧交流)ガス負荷開閉器」として知られています。さらにその中でも設置場所が架空電線路を敷設するための鉄柱やコンクリート柱、いわゆる電柱の上にあるものは「柱上」という単語を付加します。つまりPASなら、「柱上高圧交流気中負荷開閉器」という具合になります。長いですね。

余談ですが、日本語名称で「高圧交流負荷開閉器」というよく似た名前の開閉器がありますが、こちらは「LBS」というものになります。同じような文字が並び、非常に分かりづらいのでPASを単に「気中負荷開閉器」PGSを単に「ガス負荷開閉器」とよび、LBSを「高圧交流負荷開閉器」とよび分けている場合もあります。LBSはキュービクルなどの中に設置され、実物としては見た目も設置場所も全く異なるので間違えることはないでしょう。ただ、日本語名称ではどちらのことを指すのか注意が必要かもしれません。

話を戻します。この記事では、PASやPGSなどがどのようにして保護における最後の砦としての役割を担っているのかについて解説します。

1)PASやPGSは開閉器

先程、PASやPGSの日本語名称について述べましたが、その中に「気中」や「ガス」という文字があります。何がこの「気中」や「ガス」と関わるのでしょうか。

結論からいうと、接触子(接点部)を空気やガスで封入したものということになります。これは、電路の開放時に発生するアークを消弧するための部屋となります。「アークの消弧」については過電流継電器~高圧受変電保護(遮断器連携)~の記事に記載していますので参考にしてください。ちなみにPGSで封入されているガスは不活性で有名な6フッ化硫黄ガスです。

ただし、PASやPGSは文字どおり開閉器であり、短絡電流などの大電流を遮断する能力を有していません。あくまで「負荷開閉器」として負荷電流の開放までを可能とする機器です。

まずはこのことを理解のうえ、以降を読み進めてください。

2)過電流(短絡電流)からの保護

PASやPGSが電力系統保護の最終手段であることは冒頭でも述べたとおりです。特に構内で発生した過電流に対して発生箇所がVCB(OCR)のさらに上流側(電源側)であった等、何らかの理由で遮断器が動作しなかった場合、また動作しようとしたものの事故電流の遮断に至ることができなかった場合にバックアップ的にPASやPGSが動作することとなります。

ですが、先に述べたようにPASやPGSは開閉器です。大電流の遮断能力は有していません。ではどのようにして短絡事故などから電路を保護するのでしょうか。

これに関しては後の項「3.」の「SOG制御装置」とあわせて説明します。

3)地絡からの保護

PASやPGSは地絡事故時の保護も担います。ここでも先に少しだけ触れたSOG制御装置との連携になります。地絡(方向)継電器〜零相の変化で検出〜の記事で解説している内容と同じ機能があります。

地絡事故からの保護においては短絡電流のような大電流を相手取るわけではありませんのでSOG制御装置からの指令に素直に連動するかたちで保護動作が実行されます。

2.責任分界点

PASやPGS(以下「PAS(PGS等)」)には保護と同時にもうひとつ、大切な役割があります。

それは「責任分界点」になりうるということです。この責任分界点を簡単に説明すると、「電気保安上の責任を区分するポイント」ということになります。

以降で電気保安上、責任分界点かどのような意味をもつのかについて説明します。

1)管理範囲の境界

PAS(PGS等)は責任分界点になりうると述べましたが、これは「管理範囲の境界」であるということでした。

具体的には、例えば一般電気事業者(以下「電力会社」)Aから電力供給をうけている需要家Bがあるとします。このA,B間で電気事故が発生した場合にその事故はPAS(PGS等)を境にどちら側で発生したのかをもってその責任の所在を判別するということです。ということは同時にその復旧をどちらが実施すべきであるかも責任分界点に依存するということになります。

また事故などが発生していなくとも機器のメンテナンスや更新はどちらの責務として行うのかもこの責任分界点によって区分されることとなります。

上の図は既出ではありますが単線結線図の例となります。単線結線図の上側中央のPAS手前に二点鎖線があります。この二点鎖線を境界に責任分界点が存在することとなります。

2)PASのどのポイント?

PAS(PGS等)が責任分界点としての役割を担うと述べましたが、どのように設置接続すると責任分界点としての役割を有し、そしてこれらの機器のどこが厳密な分界点となるのでしょうか。

まずPAS(PGS等)に責任分界点としての意味を持たせるためには「1号柱」とよばれる電柱上部に設置する必要があります。1号柱は「構内第1柱」ともよばれ、電力会社からの電力を需要家構内で一番最初に受け取るポイントとなります。言い換えれば電力会社の送電線と構内の電線路が接続される、需要家からみた電気的最上流の位置ということです。

まずはこの位置に設置することでそのPAS(PGS等)が責任分界点としての意味をもつこととなります。さらに、このPAS(PGS等)のどの部分が責任分界の境界となるかというと、電源側(一次側)接続点です。

つまりこのときのPAS(PGS等)自体は需要家の財産ですので、その電源側の接続点こそが厳密な責任分界点となるのです。

3)PAS未設置の場合

では、1号柱にPAS(PGS等)を設置しない場合はどこが責任分界点となるのでしょうか。場合によっては1号柱が受電点付近に存在せず、直接キュービクル等に電線が引き込まれていることもあるでしょう。

このような場合は責任分界点としてのPAS(PGS等)が存在しませんので、そのポイントはより電気的下流へ移動するような気がします。

しかし実はそうならないのです。このような場合、たとえ電線が電力会社のものであったとしても責任分界点は需要家直前の電力会社PAS等の負荷側(二次側)になります。これは、本来需要家側で管理する必要のないケーブルが管理範囲に入ってくるということになります。このような需要家への供給状態を「出迎え方式」といいます。

出迎え方式では保護の最後の砦は存在しません。ということは電力会社PAS等の負荷側接続点から受変電設備までの「出迎え線」で事故があった場合、それは「波及事故」という付近一帯を巻き込んだ停電に陥ることが必至であることを意味し、かつその責任は需要家にあるということになります。

また、出迎え線ではなくさらに負荷側での電気事故発生時であっても、構内の遮断器が何らかの理由で動作しなかった場合、そのまま波及事故へと至ってしまいます。

年次点検や精密点検時の準備段取りでも逐一電力会社を巻き込むこととなりますので、あまりメリットのある敷設方法ではないことが明らかです。

どうしても物理的に構内柱を立てられない場合や(建築や道路など)法的に設置が不可能な場合を除いて、可能な限りPAS(PGS等)を設けるようにしましょう。

4)責任分界点の例外

責任分界点から電気的下流、つまり負荷側は需要家の責任区分となり、電気部品等の財産も需要家の管理のもとで更新やメンテナンスが実施されるべきと述べましたが、とても大切な例外があります。

それは電力会社の計測器一式です。需要家に設置される電力会社の計器は、その需要家でどれだけの電力消費があったかを計上するものであり、直接金額へと結びつく機器です。

こればっかりは責任分界点より負荷側にあるからといって勝手に触ってよいものではありません。たいていは「VCT(計器用変成器)」と「電力量計」がセットで設置されており、特に電力量計には「封」がされています。メンテナンス時に間違って封を解いてしまったり、位置を変更してしまわないように注意しましょう。

3.SOG制御装置と連動

過電流継電器~高圧受変電保護(遮断器連携)~の記事や、地絡(方向)継電器〜零相の変化で検出〜の記事では遮断器(CB)という電路の遮断を目的とした機器が、過電流継電器(OCR)や地絡方向継電器(DGR)などの機器からの指令により事故時の電路保護を実行していると解説しました。

PAS(PGS等)も同様で、「SOG制御装置」とよばれる制御器と連携して事故時の保護を実行します。

SOG制御装置の「SOG」は「Storage Over Current Ground」の略で、「SO」は「Storage Over Current」の略となり「過電流蓄勢」という意味になります。また「G」は「Ground Relay」の略となり「地絡継電器」という意味になります。

あくまで筆者の知見ではありますが、なぜPAS(PGS等)がOCRやDGRなどとの連携ではないのかについては、PAS(PGS等)が過電流と地絡のどちらの事故にも対応できるようにつくられていることと、蓄勢動作(後述)という過電流に対しての特殊な動きにその答えがあると考えます。

1)SO(過電流蓄勢)動作

SOG制御装置の「SO動作」について説明します。「SO」は「Storage Over Current」の略で、このときの「Storage」は「蓄勢」と訳されます。

先に「PAS(PGS等)は短絡電流に代表されるような大電流を遮断する能力は有していない」と述べました。ということは過電流継電器~高圧受変電保護(遮断器連携)~で説明のようにOCRから信号を受け取り、整定値に従い時間経過後即遮断というわけにはいきません。

そこで以下の順序で、事故系統の切り離し動作を実行することとなります。

①短絡事故等により過電流が発生。

②PAS内部の「OCLR」が過電流を検出し、「過電流ロック」というPAS(PGS等)の開放禁止動作を実行。

③同時にSOG制御装置内部では過電流発生により、過電流ロック状態であることを接点動作等によって記憶する。

④電力会社の開閉所等の遮断器にて事故系統をエリアごと遮断。

⑤過電流ロック状態を記憶しているSOG制御装置がさらに「NVR(停電検出器)」にて停電検出。

⑥過電流ロックと停電の条件が揃ったところで「SOR(過電流蓄勢継電器)」が動作し出力リレーを励磁する。

⑦出力リレーの接点動作により、PAS(PGS等)内部のトリップコイルがはたらき、PAS(PGS等)の接触器が開放される。

⑧電力会社の遮断器が「再閉路」され、PAS(PGS等)により開放された需要家以外の需要家へ電力が供給される。

過電流蓄勢動作は上記①〜⑧の手順で実行されます。大電流の遮断能力を有しないPAS(PGS等)は電力会社の遮断器と連携して事故点の切り離しを行うということが上記の動作順序からわかります。

PAS(PGS等)に内蔵の「OCLR」は「OCR」とよばれることもあるのでVCBなどと連携する過電流遮断のものと混同しないように気をつけましょう。また「NVR」や「SOR」などの検出器,継電器もメーカーによってよび名がかわることは充分考えられますので取扱説明書を読むときには注意が必要です。

2)停電ではない?

PAS(PGS等)とSOG制御装置による過電流保護の過程は説明のとおりですが、ここで疑問が湧いてしまいます。それは電力会社の遮断器が一度開放されるということです。これはすでに停電ではないのでしょうか。

電力会社の開閉所等に設置されている遮断器による遮断動作は系統に含まれる範囲の停電を意味します。これが長時間にわたり継続される場合をエリア停電といいます。ですが今回説明のSO動作による事故点切り離しでは、事故点が切り離されたあとすぐに「再閉路」という動作により事故点需要家以外の電力供給は再開されることとなります。この場合はエリア停電とはいわないようです。

再閉路は送電のリトライです。ある需要家の電気事故が開閉所等における遮断動作のきっかけとなるとき、事故点となる需要家に設置のPAS(PGS等)との連携で付近への電力供給を再開できた場合、再閉路は成功ということになります。

対して、事故点となる需要家にPAS(PGS等)が存在せず再閉路してもすぐに開閉所での遮断動作に陥ってしまった場合はこれ以降電力の再供給はされませんのでエリア停電、つまり波及事故ということになります。

波及事故は社会的影響の大きいトラブルであり、原因となった需要家には補償の責任が生じると考えてください。

3)G(地絡)動作

地絡における動作は地絡(方向)継電器〜零相の変化で検出〜の記事に記載とほぼ同じと考えてもらって差し支えありません。こちらの記事で既に説明している内容と重複してしまいますのでここでは簡単にまとめます。

G動作では零相変流器(ZCT)という検出器で零相電流というベクトル合成による電流のバランスを監視しています。これにより系統に地絡が生じたか否かを判別します。

方向性の地絡検出では、先の零相電流に加え、零相電圧検出器(ZPD)という検出器で零相電圧というベクトル合成による電圧のバランスを監視しています。これは、近隣別需要家で発生した地絡事故の影響により構内の継電器が不必要動作をしないようにするための検出器です。地絡事故の発生が構内外のどちらであるかを見分けます。

上記の検出器による信号と整定値に応じて、地絡事故発生時に継電器が遮断器や開閉器へ電路開放の指令を発信します。

PAS(PGS等)として特筆すべきは地絡時であれば蓄勢動作のような挙動は不要であり、そのまま電路を開放することができるということです。地絡時に電路に生じている電流は負荷電流であり、短絡時のような大電流ではないということが理由になります。整定による開放指令でPAS(PGS等)は直ぐに開放します。

また、先に触れましたがPAS(PGS等)とSOG制御装置での地絡保護においても「無方向性」と「方向性」があります。方向性を選定することは「もらい事故」という不必要動作の防止にもなりますので特別な理由が無い限り方向性のものを選定する方が良いです。

4.PAS(PGS等)とSOG制御装置の接続

PAS(PGS等)とSOG制御装置の接続について説明します。ここでとりあげる機器は方向性の地絡検出機能を有するものであることを前提としています。

1)接続図

以下に主回路に対するPAS(PGS等)とSOG制御装置の接続を図示します。端子名や内部機器名が異なる場合がありますので必ず仕様書や取扱説明書を確認してください。

またSOG制御装置の内部を、わかりやすさのために最低限の範囲でかなり簡略化して記載しています。また、今回の説明において特に記載の必要が無い「警報接点」は省いています。

図に記載のとおり、主回路にPAS(PGS等)の接触子(接点部)が割り込むように接続されています。同時に、ZCTやOCLRも主回路に挿入されるかたちで接続されます。他にもZPDやVT(後述)が接続されます。

PAS(PGS等)の電源側と負荷側を接続した時点で、OLCR,ZCT,ZPD,VTなどは内部的に接続されることとなりますので、これらを意図して主回路につなぎこむ作業は必要はありません。

ただし、SOG制御装置への電源や各信号線は接続する必要があります。

同一メーカーのセット型式であればPAS(PGS等)側とSOG制御装置側の端子名は合わせてあるようですので、同じ端子どうしを接続します。

ZCTとZPDの接続については、各々の二次側の2線のうち1線を接地線と共通として短絡してあることがほとんどです。ZCTのZ1端子とZ2端子のうちZ2とZPDのY1端子とY2端子のうちY2はPAS内部で短絡された状態で引き出されて、SOG制御装置へ繋ぎこむということになります。この端子にはたいていの場合、Z2という番号が付加されています。

2)VT内蔵オプションに注意

PAS(PGS等)とSOG制御装置を選定する場合、「VT内蔵」という表記を目にすることがあります。もし、これを選定するならばSOG制御装置の制御電源接続には充分に注意してください。

VT内蔵オプションを選定したのであれば、PAS(PGS等)のP1,P2端子に外部からの電源を接続しないように注意しましょう。VT内蔵のPAS(PGS等)のP1,P2端子に外部からの電源を接続してしまうと、電源に電源を接続してしまうことになります。この状態はたとえ同電位であっても、異系統電源の意図せぬ突き合わせとなります。位相が合っていない場合などで過大な電流を生じることとなります。非常に危険ですので必ず確認しましょう。

VT内蔵のPAS(PGS等)では、そのP1,P2端子をSOG制御装置のP1,P2に接続することで制御電源を供給します。端子記号も必ずP1,P2とは限らないかもしれませんので、仕様書や取扱説明書の確認は必須です。

3)LA内蔵オプション

選定時に付加することができるオプションとしては、「LA内蔵」というものもあります。「LA」は「避雷器」や「アレスタ」ともよばれます。

これは誘導雷や開閉サージにより系統に異常電圧が発生した場合に、これを接地線を経由して大地に放電するための機器です。ある一定の電圧までは絶縁していますが、基準を超える電圧で導通する特性をもつ素子から成り立っています。

この機能をもつPAS(PGS等)を選定した場合、実は特に何も意識せずともLAは機能してくれます。ただし、PAS(PGS等)に確実にA種接地工事が施されていた場合という前提のもとです。

ここで説明のPAS(PGS等)は高圧用のものなのでA種接地工事が必須です。確実な接地ができているならば、内蔵されたLAは異常電圧に対して動作してくれます。ただし、LAの接地側が金属製外箱の接地端子と内部的に短絡していることを、仕様書や取扱説明書で必ず確認してください。もしもそうでない場合があったとしても、やはり取扱説明書等の記載のとおりに接続しておけば問題はありません。

5.より確実な保護を

ここまで、PAS(PGS等)およびSOG制御装置について説明してきました。電気設備では様々な事故に対して備えておく必要があります。過電流,地絡はもちろん、過電圧や不足電圧、その他逆潮など監視対象は数多くあります。

とはいえ事実上受変電に欠かすことのできない保護機器のひとつであるPAS(PGS等)とSOG制御装置の組み合わせについて、しっかりとおさえておくことは電気保安としては必須です。

種類も多いうえ、動きや接続方法も異なる保護継電器、またそれに連動する開閉器や遮断器など様々ありますが、まずは電気事故の多くを占める過電流や地絡から如何にして系統を保護するのかを把握していくことが大切であると考えます。