部品が無い!
皆さんも過去に必要な部品が手元に無いことによる不便を感じられたことは無いでしょうか。そのようなことは、ケースは違えどあらゆるところで起きているかと思います。
保全者である筆者にとって急な設備トラブル発生時に対象の部品が手元に無いということがひょっとしたらいちばんやっかいかもしれません。
その日も生産を管理しているスタッフから「容器押し出しのシリンダが動かないんですけど診てもらえますか?」という依頼をうけ現場へ。
確かに本来動くべきタイミングがきても全く音沙汰がありません。早速原因究明のための調査開始です。
然るべきタイミングでの信号の発信状況からそれに応じた電圧の有無、念の為エアの供給状況を淡々と調べていった結果、電磁弁(ソレノイドバルブ)の動作不良であることがほぼ確定しました。あとは対象部品の交換です。交換対象は図中にあるDC24[V]の電磁弁です。この時点まではごく簡単な保全作業でした。
しかし、問題はすぐにやってきました。交換用の電磁弁が無いのです!そして、明日には復旧しなければ製品納期の問題がやってきます。
できることを考える
部品の電気的仕様はDC24[V]の復作動(ダブルソレノイド)、思いつく限りを探しましたがそれらしいものは見当たりません。「もっと在庫状況の精査をしておけば…」と後悔してもはじまりません。
今から急いで発注したとしてもおそらく1週間後の納品、とても間に合いそうにありません。どうにかシリンダが往復動作をしてくれてタイミングよく両端のオートスイッチが反応するようにできないかを考えました。
そうして出た結論は、「AC100[V]の単作動電磁弁(シングルソレノイド)2個で対応する」でした。場内に保有するその部品で行きと帰りの信号を別々に扱い、DC24[V]に関してはリレーで変換することで対応するというものです。
すぐにエアーと電気の回路を組みました。
実際に組んだものが下の図になります。
わかりやすさのためにエアーと電気の回路を同じ図面上に書いていますが、通常はあまりこのような書き方はしませんので誤解のないようご注意ください。
念の為組み付けたものを試運転して安全も確保しました。そして実機に投入です。
動作自体に問題はありません。なんとかこれで設備は稼働できるようになり生産も可能となりました。ホッとした瞬間でした。
部品在庫について
今回の問題は劣化した電磁弁と同型式や後継機の代替が手元になかったことにあります。そもそもこれさえあればなんなく解決できたことです。
では、場内にある様々な部品の在庫を全種類そろえるのが正解なのでしょうか。少なくとも筆者にはそうは思えません。
もちろん全種そろっていることは理想でしょう。しかし現実的にそんなことをやっていたのではそのための出費ばかりが嵩み、とても生産によるコストの回収なんかできなくなってしまいかねません。
そこで必要になってくるのは、まず部品自体を統一していくことだと考えます。似たような働きのものを統合するかもしくは代用が効きやすいものを選定する、または短納期のものを選ぶなどでしょう。
その上で「これでしか対応できない」ようなものに関しては在庫しておくということが大切ではないかと思います。
さらに、在庫も難しいような多品種に細分化された部品においては汎用性の高いものを用意しておき手間は多少かかるけど即興の組み換えで対応可能なようにしておくことも必要になるかと思います。
部品の劣化はあたりまえ
当然のことながら形あるものはいつか必ず壊れます。そのときにどうするかは機器などを導入するときから考えておくべきことです。
あまりにも特殊なものを使用せざるを得ない場合、そのものが破損したときにどのような影響があるのかをできる限り考えておくべきです。ですが、現実的にはすべての部品に気をまわし対応策を用意しておくのは不可能なのかもしれません。いや、現実不可能でしょう。
しかし、そういうことをさらにカバーするのが人の機転だと思います。より高度な専門知識によるもの、また専門的でなくても柔軟に対応できるいい意味での要領の良さがなにより価値のあるものだと思います。こういうことは普段のトレーニングで養うことができると筆者は信じています。
つまりは、部品に関しては在庫や仕様の統一などにより対応し、そして人は常に勉強を怠らないということが大切なのだと思います。
筆者も皆さんに引き離されぬよう日々勉強していきます!