1.バルブが開かない!
そのトラブルは一本の内線電話で知ることとなりました。
「takuくん、給気用バルブが開かないんだが…!」
「えっ!ラインは大丈夫ですか?配管内は?」
「まだわからん…これから調べるから…ただ、とにかく給気用バルブが開かないと…」
「わかりました。すぐ行きます!」
問題の「給気用バルブ」とは、ある条件下で配管内が減圧(負圧)となるのでそれを防止するための給気を行う自動バルブです。これが開かないと吸い上げ現象が発生し、ラインをバラして洗浄しなくてはならなくなります。
筆者は現場に急ぎました。
2.CPが落ちてる
筆者が駆けつけたころには、現場では問題のラインに対する加圧(大気圧まで)の措置が終わっていました。素早い対応です。
筆者もすぐにバルブの開かない原因を探し始めました。先ずは制御盤内をチェックです。
即、見た目でわかる状態を見つけました。自動バルブの電磁弁コイルにAC200[V]電源を送るためのCP(サーキットプロテクター)が落ちているのです。
実はこの電磁弁付き自動バルブ、最近(一月前)に他の負荷機器(自動バルブやポンプ)を含め制御盤ごと更新したばかりでした。
「どうして今更このタイミングでCPが落ちる?回路の異常?…外的要因?」
3.現状調査
とりあえずはCPが遮断動作をするので、盤内での短絡,端子台〜配線での短絡の有無を調べましたが特に異常は見当たりません。外部端子から先を離線してリレーのみの動作も確認してみました。ついでにコイル抵抗も確認しましたが、やはりこれといって短絡しているようなところはありません。
「(んん〜…盤内も外部も回路や配線上では問題無しか…残すところはやはりバルブ自身の問題か…コイル抵抗はあったけど仕様書まだ見てないし…そういえばインピーダンスも…しかし、時限装置みたいな動きだな………あれ?まさか!?)」
頭の中をぐるぐる回していたら直ぐに仮説が出てきました。そしてそれを周囲に問いかけてみました。
「これ!まさかとは思うけど100[V]の電磁弁ついてないですか!?」
周りに問いかけたところ関係者全員が一斉にバルブのある3階へと駆け上がって行きました。
4.AC100[V]でした
筆者も調査中の状態を一度元に戻し3階へと向かいました。その途中で確認をして降りてきた人に「100[V]でした…」と連絡を受けました。
筆者はこの設備の更新担当者がどれだけ外部の機器に気を遣って発注したかを知っていました。その証拠に筆者にも電気仕様について何度も訊ねてくれていました。
その中で今回の自動バルブの話もあり、「takuくん、電磁弁の仕様はAC200[V]でいいんだよね?リミットスイッチも制御上必要なんだよね?」と何度も確認してくれていました。
そしてその内容での見積書も持ってきて、間違いないかを確認していました。
ここまでしてなぜ今回の取り違いが起きたのでしょう。
5.このあとどうする?
実は今回、送られてきた製品が既に間違っていたというのが端的な原因でした。それはメーカーサイドで起こったのか商社との伝達時に起こったのかはわかりません。
しかし、当該バルブは汎用品で標準仕様であり、これまで何度も使用実績のあるバルブで、ある日突然発注したものと違うものが来るなんて想像もしていなかったと思います。
もちろん確認は必要ですし、そこに少なからず油断はあったと思います。ですが先ずは間違いない品がくることが前提だと考えますので、責任の多くが発注者や施工者にあるなどとは思えません。ただ、筆者には「(関係者にもっと注意を促しておけば…)」という後悔と反省があります。
そしてこの後はすぐに「今からどうするんだ」という話が真っ先に迫ってきています。
こちらでまずやらなければならないことは、毎度のごとく時間に限りがある中、如何にして再稼働にこぎつけるかです。今回問題を起こした電磁弁はもちろん使えません。
方法はいくつかありました
①保有している在庫を駆使して稼働する
②短納期の代替品を駆使して稼働する
③同型品でAC200[V]のものを最短で手に入れて稼働する
結論としては③を進めながらバックアップで①の方法も進めるということで作業開始しました。幸いシングルソレノイドでAC200[V]の電磁弁は保有在庫があったので、それをつける準備を始めました。
6.間に合った
電磁弁の取付作業などを進め準備もそろそろ出来あがり、確認し、皆もこれで稼働に入ろうかと構えたところで翌日早い時間帯にAC200[V]の同型品が手に入るという朗報が入ってきました。
間に合ったのです。
品物が届き次第直ぐに取付を行い動作チェックをしました。もう定格電圧の確認も怠りません。
無事設備は立上がり稼働を始めました。ホッと胸を撫で下ろした瞬間です。
今回の教訓は月並みですが、なんだかんだで確認の大切さを再認識しました。いつもそうだから今日もそうだとは限らないということです。特に間に人が介入する場合は今日がいつもと一緒という固定観念は捨てなければならないことを痛感しました。
ケガもなにもなかったことは運が良かっただけです。この事例を受けて考えたことは、特に電気的な話は可能な限り自らの目でも確認し、どうしても確認できない場合は必ず申し送りをし、わかりやすい説明を添えるよう徹底することです。