オームの法則

電気の基礎
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1.オームの法則

出ました!...というか出してしまいました...「オームの法則」。多くの人が拒否反応を示し、電気を学び始めた人が混乱させられることで有名な法則です。

導かれる計算式は以下のとおり。

E = IR [V]

E[V];電圧,I[A];電流,R[Ω];抵抗

なぜそんなに拒否反応の大きなものになってしまっているのでしょうか。

筆者の予測としては、おそらく思考を電気回路と組み合わせなければならないことによるものだと考えます。

オームの法則自体はただ単に掛け算や割り算の算数です。なので普通に小学校の学習範囲です。しかしここに、こと電気回路において図とにらめっこしながらこの法則を利用するとなるとなんだかややこしくなる、という図式のように感じます。

目に見えない物質の挙動を図中で想像しながら数式に当て込んでいく作業。正直なところ面倒な作業ですね。そしていまいち概念を感覚レベルまで落とし込んで掴みきれない言葉「電圧」「電流」「抵抗」。

まずはここのややこしいヤツ感をできる限り取り除きましょう。

以下筆者の言葉によるものです。誤解をおそれず説明してみます!

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2.電気の三要素

では、電気の三要素である「電圧」「電流」「抵抗」について説明します。

1)電圧

電圧とはどれくらいの電流を発生させ得るかのポテンシャルのことです。ある機器(電気的負荷)に対しいくらの電圧をかける(電圧の印加)かによって後に述べる電流の値が変化します。

電圧は電流を発生させるための電気的な力の源ともいえると考えます。

2)電流

電流とは電源と電気的負荷とそれをつなぐ配線に生じた電子の流れです。正確にはその電子の流れの逆方向のことです。

更に数値としては、ある断面を単位時間(1秒)あたりに通過する電子の量です。

3)抵抗

正確には電気抵抗とよばれます。抵抗には電子の流れを妨げる作用があります。

電子の流れを鈍化させ、電圧を下げてしまう作用をもつものを抵抗とよびます。

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3.オームの法則の利用

電気の三要素について解説しましたが、ここから実際にオームの法則を利用することについて説明します。

1)電流の算出

上の図はDC24[V]の電源に、3[Ω]の抵抗を接続した状態です。結果として8[A]の電流が生じることになります。

ここにすでにオームの法則は適用されています。先の条件は、電源電圧;E=24[V],抵抗;R=3[Ω]です。では、電流はどのようにして導かれたのでしょう。それは以下のとおりです。

E = IR [V]より

E = 24 [V],R = 3 [Ω]を代入

24 = 3I  →  I = 24/3 = 8[A]

よって生じる電流の値は8[A]ということになります。

2)抵抗の算出

電源は先程と同じくDC24[V]、動作中の電流値は6[A]です。このとき負荷の抵抗値は以下のように算出されます。

条件は電源電圧;E=24[V],電流;I=6[A]となっています。

E = IR[V]より

24 = 6R → R = 24/6 = 4[Ω]

よって負荷の抵抗は4[Ω]ということになります。

3)電圧の算出

負荷の抵抗は12[Ω]、回路全体に2[A]の電流が生じています。このときの電圧は以下のように算出されます。

条件は回路電流;I=2[A],抵抗;R=12[Ω]となっています。

E = IR[V]より

E = 2 × 12 → E = 24[V]

よって電圧は24[V]ということになります。

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4.厳密には配線抵抗も考慮

さて、3パターンの算出を説明しましたがここで注意です。

オームの法則を利用した上記三種類の算出において、正確には配線にもわずかながら抵抗はありますので本当は配線における影響分も計算(配線における抵抗降下など)が必要なりますが現時点では話がややこしくなるだけですので、ここでは無視してもよい程度のものとして扱っています。扱う数値が極端に大きくなったり、極端に小さくなると無視できなくなってきます。

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5.いろいろな回路

オームの法則の利用について説明してきましたが、実際の電気回路はこれまでのように単純明快なものばかりではありません。むしろ今までのような回路が幾重にも重なり複雑に絡み合ったものの方が多く存在します。

そこで、この後からはそんな重なり合ったような回路について各々の算出方法を解説します。

とはいえ、これまでのことがきっちりと理解できているならばあまり気負う必要もありません。どんなに複雑になってもそれは、複雑なだけだあって難解ではありません。

ぜひリラックスして、「そんなものか」程度に思ってください。

ただし、電池などの電源の接続方法に関して、異なる電圧源の並列接続については省略します。

理由としては、計算が複雑化(連立方程式や重ね合わせの理、テブナンの定理を利用)し過ぎることと実際にはやってはならない場合が多いからです。

どうしても、という場合は上記の「重ね合わせの理」などを調べるとその計算方法が分かります。

1)電源の直列接続

2個以上の電池などを一直線に接続する方法です。このときプラス極同士やマイナス極同士を接続してはいけません。

同じ極同士を接続すると電流は生じないばかりか場合によっては電源トラブルにつながります。

直列に接続された電源は単純に足し合わせることになります。非常にシンプルです。

2)電源の並列接続

先に記載のとおり、異種異電圧の並列接続はトラブルの可能性を伴ったり複雑になりすぎたりするので説明を省きますが、同種同電圧の並列接続になったとたん単純になります。

乾電池を例とする同種電源の並列接続においては電源電圧の変化はありません。1.5[V]電池を並列で2個つないでも3個つないでも4個つないでも電源電圧は1.5[V]です。

もちろん極性には注意です。逆に接続してしまうとあっという間に短絡(ショート)です。循環電流という過大な電流の発生でまたたく間に発火焼損に至ります。

3)抵抗の直列接続

負荷などの抵抗を直列接続した場合その抵抗値は、電圧のときと同じく単純な足し算になります。

極性が存在する負荷ではもちろんそのプラスとマイナスを間違えないように気をつけましょう。

3)抵抗の並列接続

負荷などの抵抗は並列接続した場合少しややこしくなります。計算方法を日本語で表現すると「逆数の和の逆数」となります。

「なにソレ?」…といわれそうなので説明します。

まず、逆数とは分母分子を入れ替えた数ということです。対象が整数の場合、例えば「2」だとすると「2」を無理やり分数表記したならば「2/1」となります。その分母分子を入れ替えるということなので逆数は「1/2」となります。

例えば2[Ω]と3[Ω]の並列接続を考えます。「逆数の和の逆数」は以下のような計算になります。ちなみに、直列でも並列でも法則に従い正しくまとめられた抵抗を合成抵抗といいます。下の計算ではR0と表記します。

R0 = 1 / {(1/2) + (1/3)}

R0 = 1 / {(3/6) + (2/6)}

R0 = 1 / (5/6) = 6/5

R0 = 1.2[Ω]

上記のような計算結果となります。かなり面倒な計算ですね。ただ、慣れたらなんてことはありません。ちなみに計算過程に分母部分の「(x/y)」表記がありますがこれは、あえて見やすさのためにそう表記したまでで、正確には必要のない括弧です。

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5.分岐のある回路計算

それでは、これまでの知識を活かして電源や負荷において分岐のある回路について計算してみましょう。

下図のような回路においての要素計算をしてみます。

ただしここでひとつ注意があります。以下に出てくる電流I[A]についてはあくまで回路全体に生じる電流という意味です。決して分岐回路各々にその電流が生じていると誤解しないよう注意してください。

1)電流の算出

条件はE=12[V],R1=1[Ω],R2=3[Ω],R3=6[Ω]です。この条件下で電流を算出していきます。

まずは合成抵抗を計算します。

R0 = R1 + [1 / {(1/R2) + (1/R3)}][Ω]

上記に数値を代入します。

R0 = 1 + [1 / {(1/3) + (1/6)}][Ω]

R0 = 1 + {1 / (3/6)}[Ω]

R0 = 1 + {1 / (1/2)}[Ω]

R0 = 1 + 2 = 3[Ω]

配線の抵抗を無視できる前提ならば、次にオームの法則より電流を計算します。

E = IR[V]より

12 = 3I[V]

I = 12/3 = 4[A]

よって回路全体に生じる電流は4[A]となります。

2)電圧の算出

条件はI=4[A],R1=1[Ω],R2=3[Ω],R3=6[Ω]です。この条件下で電圧を算出していきます。

1)のときと全く同様に合成抵抗を計算します。

すでにR0=3[Ω]と出ているのでオームの法則により電圧を計算します。

E = IR[V]より

E = 4 × 3 = 12[V]

配線の抵抗降下を無視できるなら合成抵抗の端子間の電圧と電源電圧は等しいので、E = 12[V]となります。

交直流の電圧電流測定および抵抗測定もこれ一つ!広い測定範囲も特徴の設計にも保全にも役立つ秀逸なツールです。

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6.電気計算の基本と実務

ここまで、オームの法則の利用方法について説明しました。分岐している回路においても、オームの法則と合成抵抗の値の計算方法をおさえておけばある程度の電気計算が可能になります。実務においては、設計時に予測すべき電流の大きさの算出や機器が思うように動作しない場合の理論値との照らし合わせにこのような計算が用いられます。

もちろんこれだけが全てというわけではありませんが、ここを起点としてぜひ電気計算にも親しんでもらえたらと思います。

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