非常用発電機の誤動作

電力と制御の体験記
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1.停電?

ある日事務所で制御盤設計の仕事をしていたところ、集中警報盤からの発報がありました。内容は瞬間的な電圧の低下ということです。

「瞬停?とりあえずは受電室をみとかないと。」

というわけで、受電室に向かったわけですが、近づくごとにたまに場外を起因として発生する瞬停とは違うことが明確になっていき筆者の歩く速度も段々と上がっていきました。

同時に「なんで?なんで?」が頭の中をぐるぐる回っています。

「ドゥルルルルルルル!!…」

非常用発電機が起動しています。

周囲を見渡しても非常用発電機が起動する条件ではないことが明らかです。というのもこの発電機は限られた動力系の非常用であり、これが起動するときは生産設備が電源を失っているはずなのです。

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2.落ちてる

受電室内での電圧低下監視センサーはたしかに出力しています。このセンサーがみている電源の元を確認してみました。

見事にトリップしています。しかも漏電トリップのようです。

とりあえず漏電元を探して発電機を黙らせないといけません。

発電機の制御電源を切るのが先か漏電元を見つけるのが先かと考えたものの、盤内の制御電源はナイフスイッチであり、たかが制御用と舐めてかかったためにアークで短絡なんてことは嫌なので暫く発電機には無駄にまわっててもらうことにしてひとまず漏電回路を探しました。

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3.なんでこんなところと!

先ずは分電盤の幹線から一括で絶縁抵抗を測定しましたが、異常は見受けられませんでした。

「ん?ひょっとして…?」

幸い分岐の回路数も少なかったので、すぐに目視で確認できる回路の絶縁を測定しながら、消去法で潰していく最中に目に飛び込んできたのは遮断器に貼り付けられた「レクリエーションルーム」の文字。今まで気にも留めていませんでした。

「なんでこんなものがこんなに大事な回路に差し込まれているのだろうか…あっ!今日…!!」

違和感とともに今日の工事予定が思い出されました。今日はそのレクリエーションルームの改装が入ってます。

現時点で未測定の回路は遮断のまま、停電検知の回路他を復旧し発電機を黙らせて直ぐにその部屋に駆けつけました。

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4.あ、やっぱり

部屋に到着してすぐにここが原因だとわかりました。その部屋にある分電盤の漏電遮断器も漏電トリップしていたからです。

改装作業に従事していた人達に何かあったかを聞いてみましたが皆一様に「なにもやってない」との回答でした。

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4.くまなく調べる

だれも「なにもやってない」にもかかわらず漏電遮断器が反応。しかも分岐のみならず主幹も同時にとばすほどの大漏電です。自然劣化であれ人為的な何かであれ必ず原因が存在するはずです。

しかし目視でも測定でも、それと思しき状態は見当たりませんでした。絶縁抵抗はもちろんのこと、念の為線間抵抗も配線抵抗も地電圧も測定し可能な限りの目視確認もしました。

それでもこれといった異常は見受けられませんでした。

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5.結局のところ

結局回路が健全なら復旧するしかないということで電源は立上げました。いまひとつ釈然としないままその場の対応は完了となりました。

本当はいかなるものであれ原因が見つかってほしいところでした。

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6.今後の対応

この後、停電点検の機会に「レクリエーションルーム」の電源を別のところから持ってくるための工事の予定ができてしまいました。

そして良くわかったことは、やはり目的と手段があやふやな工事では後々苦労するということです。

今回を例に具体的に述べると、非常用発電機の起動に関わる回路と全く非常用発電機の動作と関係のない回路を同一の幹線上に並べたことで、その全く関係のない回路のせいで非常用発電機が無目的に起動してしまったということです。さらに予想外の回路が関係しているということで発電機起動の原因特定も僅かながらですが遅れました。

この経験は施工する(指示を出す)ときに先を見据えておかないと、後々結局自分自身が苦労するということを教えてくれた大事な経験です。

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