1.「センサー」って何?
「センサー」という言葉はもはや制御の専門家ではなくとも日常的に耳にすることがある単語ではないでしょうか。もちろん毎日や頻繁にではないでしょうが、家電の調子が悪い時や自動車の運転中に何かしらの警告音が鳴った時などは、この「センサー」というものを意識したり口にしたりすることがあるはずです。
では、「センサー」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。なにか、機器や設備を動作させるのに必要そうであることはわかるのですが、実際にどのような動きをもってして制御系に影響しているのでしょうか。
今回はそんな「センサー」について、とりわけ「ON」と「OFF」で反応を示すものを例に挙げてその動作と役割について説明します。
1)役目・役割
「センサー」の語源はおそらく「センス」ではないかと考えます。「センス」は和訳すると「感覚」「検出」という意味です。そして「センサー」を和訳すると「感知器」とでてきます。なにかを検出するためのものということですね。
実は人間にも、というか生物全般にセンサーは備わっています。「五感」での様々な情報の検出はまさにセンサーのそれと同じです。むしろ、いろいろな制御で使用されているセンサーは五感を模倣しようとしたものではないのかと感じるほどです。前置きが長くなりますのでここまでにします。
センサーの役割は特定の現象,事象の検出およびその伝達にあります。機器がどのような状態にあるのかや制御の対象をとりまく環境がどうなっているのかなどの情報を電気的または電子的につかみ取り、制御系に伝達することがその役割となります。
2)接点やトランジスタのON/OFFで伝達
ここではON/OFF動作のセンサーについての説明となりますのでアナログで出力をするセンサーの説明を割愛します。では、ON/OFF動作のセンサーは具体的にどのような動きをするのでしょうか。
結論から言えば、センサーが対象を検出した際に出力として接点やトランジスタの反転動作を実行します。これまで非導通であった接点やトランジスタを導通させることで回路を接続したり、逆にこれまで導通していた接点やトランジスタを開放し回路を遮断することで制御系に電気的信号の送信を実行します。
動作は非常に単純ですがシステムの構築には欠かせず、多くの場所で使用されています。
2.センサーの種類と動作
先ほどON/OFFで動作するセンサーは多くの場所で使用されていると述べましたが、ここでは様々な場面で使用されているもののうち代表的なON/OFFセンサーと動作の様子について説明します。
同じような動作でもセンサーの種類が変われば動作の様子も変わり、結果配線の方法も変わることに注目してください。ここでの情報がセンサーの理解に役立つようにまとめていきます。なお、ここで説明するセンサーやその結線については最低限の仕様のものとしていますので以下のものが全てではないことに注意してください。機能が多くなればその分見た目にも回路(端子)も多くなることは必然となります。
1)リミットスイッチ
主に機械系のユニット動作をつかみとるために利用されるセンサーです。呼び名としてはスイッチですがその動きはセンサーそのものです。大型のバルブや、シリンダー軸に機械的に接続されたユニット、またリニアガイドと呼ばれるレールの上を往復動作するユニットなどが動作の端や端手前に到達したことを接点動作で制御系に伝達します。
レバーに力がかかり、押し引きされることでリミットスイッチ内部の接点が反転します。この反転する接点を制御回路に組み込むことで当該ユニットや別ユニットの動作を制御することに使用します。
使用方法の多くはユニットの一部が直接リミットスイッチのレバーを押すわけではなく、ユニットに取り付けられた「ドグ」という金属板などがレバーに接触し押し込むことでリミットスイッチを動作させます。
2)マイクロスイッチ
「1)」で説明のリミットスイッチの小型版と考えて差し支えありません。小型の自動弁などの開閉情報を接点動作にて伝達します。動作としては機器の動作部に取り付けられたドグがレバーを押し、さらにプランジャを押し込むことでマイクロスイッチ内の接点が反転します。
非常に小さいため機器内に収めやすいのですが、レバーのストローク量も少ないので据え付け時はきっちりと寸法をとっておく必要があります。
3)フロートスイッチ
主として液面の上下限位置を検出するためのセンサーです。基本的には「フロート」という浮きを使用します。浮力によりフロートの姿勢としての上下を反転させることにより同時に接点の反転を実現します。
液位の上限を検知してバルブを閉止したり、下限を検知してポンプを停止したりと液面制御には欠かせないセンサーとなります。
4)近接センサー
近接センサーはコイルでつくられた磁界に検出対象(金属製)が近づくことで、その対象に発生する渦電流をきっかけとして変化するコイルのインピーダンスにより検出動作が実行可能となります。
非接触での検出が可能であり非常に便利なセンサーですが、被検出物は渦電流を発生し得るものということから金属検出専用のセンサーとなります。よって、このセンサーに対しても検出用の金属製のドグが必要になります。
5)光電センサー
これぞセンサーといわんばかりのセンサーです。投光部が光を照射し、受光部で受け取ることを基本とします。受光が成立しているかしていないかで検出対象の有無を判別します。判別の結果は主にトランジスタなどの素子によるON/OFFで出力されます。
投光受光の方法には主に以下三つの種類があります。
①透過型
投光部と受光部が別々に設置可能となっておりこの間を検出対象が遮光することで出力のON/OFFを切り換える。投光部と受光部があるので必然的にユニットが二つになる。よって結線も投光部と受光部を各々配線する必要がある。投光部は光源発生のための電源のみの結線だが、受光部には出力用の配線も必要となる。
②拡散反射型
投光部も受光部も同一センサーケース内に収められ、投光部で照射された光が検出対象で反射することで出力のON/OFFを切り換える。
③回帰反射型
専用の反射板(リフレクタ)をセンサーの対面に設置し、反射板に向かって投光する。反射光はセンサーの受光部で受けるが、この間を検出対象で遮光すると出力のON/OFFを切り換える。
④光軸調整と出力
上記三つの光電センサーについて簡単にまとめましたが、いずれも投光部受光部間の光のやりとりによる検出であり、非接触であることは共通です。このセンサーで大切なことは「光軸」と「感度」の調整であり光軸がずれていたり感度が極端に高かったり低かったりするとねらいどおりに反応してくれませんので慎重な調整が必要です。
また、多くの光電センサーでは受光部への入光で導通出力をする「入光ON」「ライトON」と受光部への入光を遮断することで導通出力をする「遮光ON」「ダークON」の設定があります。センサアンプ部でのパラメータ設定やスイッチ設定で変更します。
6)フォトセンサー
「5)」で説明の透過型光電センサーの小型版と考えて差し支えありません。動作も透過型光電センサーと同じです。入光遮光の変化でON/OFFを反転させます。しかし投光部と受光部はひとつのケース内に収められ任意の距離に設置することはできません。このセンサーの使用例としてはボールネジで動作するテーブルの原点位置検出用などです。サーボコントロール系と連動し、数値的原点検出とセンシングによる原点検出を併用する場合などにこのフォトセンサーが使用されます。
非常に小型であることから「フォト・マイクロセンサー」や「マイクロフォトセンサー」とも呼ばれます。
7)その他(圧力センサー,流量センサーなど)
圧力や流量などを測り取り閾値(しきい値)という基準を境にトランジスタなどのON/OFFで情報を伝達するセンサーです。例えば1[MPa]を閾値とした場合、1[MPa]以上でON,1[Mpa]未満でOFFという具合です。これにより容器の過圧防止や異常流量の抑制に役立てます。
このようなセンサーはその仕様,特徴からプラントで多く利用されます。もちろんマシン系の各種動力管理にも使用されます。
3.動作のきっかけや安全管理に利用
ここまでに説明しました各種センサーは途中でも申し上げたとおり、制御に必要不可欠なものになります。動作こそONとOFFの2値の信号によるものですが外部の状況をつかみ取り電気信号に変更してくれることでシステムの自動制御にも安全性向上にも大きく寄与します。
自動での動作開始のきっかけや動作許可信号としてこれらセンサーからの出力は重要な役割を担うということです。
どのような要素を2値の信号へ変換するかを理解したうえで正しく選定し正しく結線できたならば、より合理性や利便性の高いシステムになることは間違いありません。また前述のとおり、ここに記載のセンサーやその内部回路は最低限のものになります。ということはさらに高機能で付加機能の多いものを目的どおりに選定し利用できれば、よりハイレベルなシステムが構築できるということに繋がります。ただしオーバースペックには要注意です。
是非、使いこなして納得のいく設計に結びつけてください。