1.繋げばいい?
前の記事で電気のつくり方の概念を説明しましたが、そのつくり出した電気はどのようにして私達のところへ送り届けられるのでしょうか。
「どのように…って、線繋げばいいんじゃないの?」
確かに。電気なのですから使う機器があるところまで電線をひけばいいですよね。
でも、ちょっとまってください。電力会社の保有する発電所では数千〜数十万[V]で発電されています。たとえば一般家屋にただ線をひいてそんな電圧で電気を送られたらたまったものではありません。極めて危ないどころか確実に事故ですね。
ですので、電力はつくられてからいくつかの措置を経て私達の使用する場所へ送られてきています。
2.開閉所
発電所でつくり出される電力は膨大なエネルギーであり扱いがとても慎重なものです。ですので、有事の際や工事が実施される際に安全確保のための遮断ができなければなりません。
そのために「開閉所」という施設を設けここで遮断ができるようになっています。
発電所直下のみでなく各ポイントとなるところにいくつも存在します。
3.変電所
「変電所」は発電所でつくり出された電力をより使用の状態に近づけるために「変圧」という操作をする場所です。主には高い電圧を低くすることを目的とします。
構内には「変圧器」というものが存在し、これにより電圧の操作をします。
また、一般家屋などに送り届けられる際には直前の電柱の上で変圧していることもあります。電柱の上に大きなバケツのようなものがあるのを見かけたことはありませんか?それが変圧器です。
4.送電線,配電線
発電所から開閉所や変電所をいくつか経て実際に電気を使用する場所まで送り届けられるわけですが、当然それらの間は電線で繋がれることになります。
ちなみに、電気を使用する場所のことを「需要家」とよびます。
そして発電所から需要家直近の変電所までの電線を送電線とよびこれが張り巡らされた電線路を送電網といいます。
また、変電所から各需要家に電気を配分するための電線を配電線といいます。
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5.(特別)高圧送電
筆者が初めて発送電の話を聞いたとき疑問に思ったことがあります。
「なんで最初っから使用する電圧でつくってそして送ってくれないんだろ…できないわけじゃないだろうに…」
できないんです。全く現実的ではないのです。資源的にも土地的にもコスト的にも不利でしかありません。
理由としては電線があまりにも太くなりすぎるからです。それも大幅に…
その根拠は以下の単純な数式の中にあります。
P = VI [W]
上式は電力の計算式です。
P:電力[W],V:端子電圧[V],I:電流[A]となります。
意味としては「端子電圧」に「負荷に生じる電流」を乗じると「電気使用機器が消費する電力」となる、ということです。
実際は三相交流回路ですので少し形は違います(VIに√3がつき「皮相電力」となります)が基本概念は一緒です。
数々の電気使用機器には必要な電力というものがあります。電気使用機器をまとめて「負荷」といい必要とする電力を「容量」といいます。これらを合わせて「負荷容量」といいます。
電力は電気的(熱的)かつ瞬時的なエネルギーのことですが、負荷には各々必要となる電力の基準値がありこれを下回ると目的の動作ができなくなってしまいます。
たとえば、容量1000[W]のなにかしらの負荷があるとします。先程の式にP=1000[W]を代入するのですが、これを満たす右辺の数値は無数に存在します。
P=1000[W]の条件で電圧V[V]を操作してみます。
①V=1[V]ならばI=1000[A]
②V=10[V]ならばI=100[A]
③V=100[V]ならばI=10[A]
④V=1000[V]ならばI=1[A]
電圧が高ければ高いほど電流値は低く、電圧が低ければ低いほど電流値は高くなることがみてとれるかと思います。
そして先に記述したとおり、電流値が高ければ高いほど太い電線を準備する必要があります。これを避けるためになるべく高い電圧で送配電するということになります。
もちろん限度はありますし、電圧が高いということはリスクも上昇するので、防護措置も必要となることはいうまでもありません。
以上のように、発電が行われた後私達の使用する場所へと電力を送り届けるための過程について説明しました。
電気というエネルギーは当たり前のように日常へ届けられていますが意外と気を遣っているんだなと感じていただければ幸いです。