キルヒホッフの法則

電気の基礎
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1.キルヒホッフの法則

オームの法則は電気を専門としない人でも知っている、わりと有名な法則かと思います。ですが、これから取上げる「キルヒホッフの法則」は専門外ではあまり知られていない内容かもしれません。

しかしながら、この法則が示す内容はオームの法則と同じくらい重要で電気技術者等を目指すなら必ず抑えておかなければならないものです。

ここではキルヒホッフの法則の内容と電気回路上での利用のしかたを説明します。

早速いきます!

1)キルヒホッフの第一法則

「第一法則」なんて言葉が飛び出してきました。実はキルヒホッフの法則には第一法則と第二法則が存在し各々が電流則電圧則とも呼ばれます。

その名のとおり第一法則では電流の挙動に関することを、第二法則では電圧の挙動に関することを述べています。

キルヒホッフの第一法則は「流入電流の和と流出電流の和は等しい」という内容です。どういうことかを説明します。下の図のように分岐点を基準とした図面上左側から流れ込む電流を足し合わせた値と図面上右側へ流れ出る電流を足し合わせた値は常に等しくなるということです。合計10[A]流れ込んできた場合、出ていく合計はやはり10[A]です。決して9[A]になったり11[A]になったりはしません。

2)キルヒホッフの第二法則

先にも記述のとおり、第二法則は電圧則です。

その内容は「閉回路上の起電力の和と電圧降下の和は等しい」ということです。

まず「閉回路」が条件となります。これは電気的に途切れることなくループが出来上がっているということです。スイッチがOFF(開路)になって通電できなくなっていたり線が千切れている状態ではないということです。これが前提条件になります。

起電力」とは平たくいうと電位差を作り出し電流を生じさせる源で直流交流問わずの電源であると考えてください。電池などをイメージしてもらうと考えやすいと思います。

電圧降下」とは電流が生じている電気回路上の負荷の両端に現れる電位差のことで、その分起電力の損失が出ると考えてください。負荷機器の抵抗がそれにあたると思ってもらえれば問題ありません。

では先ほどの「閉回路上の…」に戻ります。下の図のE1[V]とE2[V]を足し合わせた値と、同図のV1[V]とV2[V],V3[V]を足し合わせた値は等しくなります。電流を生じさせるべく作り出した起電力と、電流を妨げ電圧降下を起こさせる負荷(抵抗など)は互いに打ち消し合うということです。ここでのE[V]を電源電圧、V[V]を端子電圧ともいいます。

ここまで、キルヒホッフの法則の第一法則と第二法則について説明しましたが、これらの法則とオームの法則をうまく活用することで、各機器毎の電流や端子電圧を計上することができます。

では、計算のやり方を図と共にみていきましょう。

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2.キルヒホッフの法則活用

キルヒホッフの法則をうまく活用し最終的にオームの法則に当て込んだりまた、その逆手順でほしい箇所の要素に対する値を知ることが可能となります。

1)分岐回路電流の算出

図のR2に関する電流を計算によって知りたい、または予測したい場合を例とします。

条件としてE1〜E10[V]の1.5[V]乾電池を10[本]直列接続,R1=4[Ω],R2=10[Ω],R3=15[Ω]です。このときのR2[Ω]に生じる電流、すなわちI2[A]をキルヒホッフの法則を活用し算出します。

①電源電圧の算出

この場合真っ先に電源電圧を知ることができます。全て同じ1.5[V]の乾電池10本分の電圧を足し合わせるので、電源電圧E0[V]は単純な掛け算で算出可能です。

E0 = 1.5 × 10 = 15[V]

②合成抵抗の算出

次に回路上の全電流I0[A]を一気に算出したいところですが、そのためには合成抵抗R0[Ω]を先に算出する必要があります。以下が算出方法です。

R0 = 4 + [1 / {(1/10) + (1/15)}][Ω]

R0 = 4 + {1 / (5/30)}[Ω]

R0 = 4 + {1 / (1/6)}[Ω]

R0 = 4 + 6 = 10[Ω]

③全電流の算出

次にオームの法則に当てはめることで全電流I0[A]が計算されます。

I0 = 15/10 = 1.5[A]

ここまできたらあと一息です。ちなみにこのときI0[A]と、R1[Ω]に生じるI1[A]は同じ値になります。

④分流計算

キルヒホッフの第一法則で示されたとおり、全電流I0[A]はR2[Ω]とR3[Ω]の回路に増減無く分けられることになります。これを「分流」といいます。そしてどれくらいの割合で分けられるかというと、「抵抗の逆比」になります。

感覚的なところでは、抵抗が大きく電気が流れにくい回路には少しだけ、抵抗が小さく電気が流れやすい回路にはたくさん流れるということです。

では数値上でいくらになるか計算します。

R2[Ω]の負荷抵抗に生じる電流

I2 = 1.5 × {15 / (10+15)}[A]

I2 = 1.5 × (3/5) = 0.9[A]

R3[Ω]の負荷抵抗に生じる電流

I= 1.5 × {10 / (10+15)}[A]

I= 1.5 × (2/5) = 0.6[A]

今回知りたい電流はI2[A]ですので、0.9[A]となります。

2)端子電圧の算出

先の図におけるR1の両端にかかる電圧を計算によって知りたい、または予測したい場合を例とします。

条件は先と全く同じです。E1〜E10[V]の1.5[V]乾電池を10[本]直列接続,R1=4[Ω],R2=10[Ω],R3=15[Ω]です。このときのR1[Ω]の両端に現れる電圧、すなわちV1[V]をキルヒホッフの法則を活用し算出します。またR2[Ω]の両端に現れる電圧をV2[V]、R3[Ω]の両端に現れる電圧をV3[V]とします。

①電源電圧の算出

電流計算時と全く同じです。念のため計算式を記載します。

E0 = 1.5 × 10 = 15[V]

②合成抵抗の算出

合成抵抗R23[Ω]を算出します。これは並列接続の部分の負荷抵抗を合成し、R1[Ω]とR23[Ω]の直列接続の負荷抵抗に置き換えることで後の電圧計算に用いるためです。負荷抵抗を全て合成するのではなく直列接続に置き換えることに注意です。

R23 = 1 / {(1/10) + (1/15)}[Ω]

R23 = 1 / (5/30)[Ω]

R23 = 1 / (1/6)[Ω]

R23 = 6[Ω]

ここに4[Ω]と6[Ω]の直列接続の回路ができたことになります。

③分圧計算

キルヒホッフの第二法則で示されたとおり、全電圧E0[V]はV1[V]とV2[V],V3[V]に増減無く分けられることになります。これを「分圧」といいます。そしてどれくらいの割合で分けられるかというと、「抵抗の比」になります。ただし、ここで注意すべきはV2[V],V3[V]は同一であるということです。

そして感覚的なところでは、抵抗が大きく電気が流れにくい負荷には大きな、抵抗が小さく電気が流れやすい負荷には小さな電圧降下が発生するということです。

では数値上でいくらになるか計算します。

R1[Ω]の負荷抵抗に生じる電圧

V1 = 15 × {4 / (4+6)}[V]

V1 = 15 × (4/10) = 6[V]

R23[Ω]の負荷抵抗に生じる電圧

V2 = V3 = 15 × {6 / (4+6)}[V]

V2 = V3 = 15 × (6/10) = 9[V]

今回知りたい電圧はV1[V]ですので、6[V]となります。

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3.どちらかが算出できればO.K.

これまでキルヒホッフの第一,第二法則で負荷単体の電流や電圧を算出しました。各々を全電流から分流したり、電源電圧から分圧したりしましたが実はこれ、分流分圧どちらかの計算が完了していればあとはオームの法則で次々算出可能な場合が多々あります。

例えば先の記述でR2[Ω]の負荷に生じる電流を算出しましたが、ここでオームの法則を適用するとV2[V](= V3[V])がそのまま算出できます。さらに、この結果から再びキルヒホッフの第二法則を適用し電源電圧から差し引けばV1[V]が算出できます。

ここで申し上げたいことは、いろいろな法則や公式はそのすべてのパターンを頭に詰め込み、暗記し適用するのみではなく、どちらかというとその成り立ちや現象に目を向けることでより理解しやすく応用の幅も広がると考えます。とはいえ、まずは初心のうちは覚えて使うということも充分たいせつなことですね。是非ご自身の状況に応じてアプローチを試行錯誤することをお勧めします。

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