1.電気知識習得の第一歩
皆さんの周りには「この人、電気のことよく知っているなぁ…」とか「難しそうな制御設計なのに、あんなのよくできるな…」と思わされる人がいませんか?そんな人たちは、如何にしてそのような知識を手に入れてきたのでしょうか。もちろんある日突然、元々知っていたかのようにその人の脳内に湧き上がってきたわけではないことは明らかです。そんな人たちにも“0”からのスタートが必ずあったはずです。
何を学ぶにしても習得するにしても“0”から“1”へのステップが最も労力を要するのではないでしょうか。学校のように教育のガイドラインがしっかりと整っている環境でならまだしも社会人として日々の業務をこなしながら、ガイドラインも敷かれていない環境下での学びである場合、その知識の習得はさらに困難なものになるということは想像に難くありません。
この記事では、特に指針もない中さらに忙しい合間を縫って電気について学習していこうと志す人のために少しでも役立てるよう何から始めるのが良いのか、そして何をきっかけに学びを進めていけば良いのかについて経験をもとにまとめてみます。
2.電気の分野も広い
先ほど、忙しい中でさらにガイドラインの無い状態での知識習得が非常に困難であることを述べました。しかし、電気について知識を得ていこうとする場合にもうひとつ、学習が困難である理由が存在します。それはこの分野の範囲が非常に広いということです。もちろん電気の分野だけに限った話ではないのですが、このことが前述の学習環境と相まってより進捗を困難にしています。ひと口に「電気」といってもその単語がカバーする範囲は多くの分類に分けることができるほど広いものとなっています。
知識の習得にあたって、まずは自身が電気の分野におけるどの部分の知識を習得しそしてどのように活かしていきたいのかをはっきりとさせましょう。
以下に、少し乱暴ではありますが電気の分野を大きくふたつの分類に分けてみます。そのうちのどちらを学びたいのか、どちらの知識を先に習得していきたいのかを決める方が良いかと考えます。
1)漠然と学び始めるとイヤになる
これも電気の分野のみに限られた話ではありませんが、目的がはっきりせず漠然とした状態で学習を始めても高い確率で拒否反応が出ると考えられます。電気は数学とも密接な関係がありますので必要性や興味,目的が薄い状態で取り掛かっても必ず立ちふさがる「数学」の壁に阻まれることとなります。
もちろん数学が好き、または得意という人であればそれだけでも知識習得のアドバンテージになりますが必ず同時に立ちふさがる「回路」の壁もクリアする必要があります。
両方の壁をクリアしてもどんどん壁は迫ってきます。「素子,部品」の壁,「化学」の壁,「力学」の壁,「法規」の壁他、数え上げれば枚挙に暇がありません。自身がなぜ電気の知識を必要とするのか、どこに興味をもったのかなどをはっきりとさせてから取り組みはじめるのが良いです。
2)ふたつの分類
先ほど電気の分野は大きくふたつに分類できると述べましたが、それはいったい各々何なのでしょうか。
回答としては「電気エネルギー」と「電気(電子)制御」です。これはよく耳にする「強電」と「弱電」にも分けられますがこれらの表現では少し境界線がはっきりとしない部分を含むのでここでは「電気エネルギー」と「電気(電子)制御」という表現にします。
エネルギーとしての電気に関する知識と電気エネルギーの制御利用の知識のうち、どちらのを習得していきたいのか、どちらの習得を先にしたいのかを決めると学習の指針が少しは見え易くなるはずです。
指針が見えるということは進むべき道ができるということですので、詳細な学習における目的の明確化と学習効率の向上という効果があります。繰り返しますが上記のふたつの分類において、自身がどちらを必要とするか、またどちらにより興味があるかを見極めて学習に取り組みましょう。
3.電気エネルギーに関する知識
電気エネルギーに関する知識を得たい場合は、後述の電気(電子)制御に比べて早い段階で数学に取り組むこととなります。いや、本来はむしろまず最初に「電気数学」なるものから入るべきでしょう。
「え?電気数学って何…??」ってなる人もいるでしょう。これは電気の特徴的な現象を数値でとらえるため、また電気エネルギーをうまくコントロールするのに必要となる数学であり「電気数学」などという名はありますが大方高校までで学習する数学の範囲がカバーできていればまずは知識の習得上支障はありません。もちろん、深く追求していく場合はより高度な数学の知識を必要とするのでしょうが、それはもはや研究者やスペシャリスト,権威とよばれる域ですのでそこを目指すひとが取り組むべき領域となります。
1)電気数学
電気エネルギーについての知識習得において数学が必須と述べましたが、これまた広い数学の範囲で何を学べばよいのでしょうか。電気数学はどのような項目に絞られるのでしょうか。
以下列挙します。なお、「四則演算」をはじめとした「小数」「分数」などを理解できていることは大前提ですので、もし電気エネルギーの分野に興味はあるけど「算数」の時点で苦手という場合は上記から始めることとなります。かなり前途は多難となります。ですがそれは「不可能」ということではありません。時間はかかりますがこつこつ積み上げることで知識習得は可能です。
①方程式,不等式
②指数
③対数
④因数分解
⑤平方根
⑥三平方の定理
⑦弧度法
⑧三角関数
⑨ベクトル
⑩複素数
⑪微分法
⑫積分法
上記の①〜⑫を順番に理解していくことで電気数学の知識を得ることとなります。
もちろんより深く理解しようとするのであればこの他に「微分方程式」や「ラプラス変換」などの項目も理解していく必要があります。
ですが、これはあくまで電気エネルギーの分野を理解するための下積みであり、本題はこのあとになります。ですので学びはじめの時点で焦って上記項目を余すことなく完璧にする必要はないでしょう。ですがあえて言うなら①~⑥くらいについてはきっちりと理解を深めておく方が無難ではあります。⑦~⑫についてももちろん大切ですが、①~⑥をおさえておかなければ理解は不可能となります。
①~⑫の基本的な考え方をきっちりおさえて、後に試験問題や実務を通じて応用方法を学んでいけば良いかと考えます。項目の多さにうんざりする必要はありません。たった今述べたとおり、すべてを焦って完璧にする必要は無く学習のレベルに応じて知識習得を実行していけば良いだけです。
2)電気理論
電気エネルギーについての知識習得の際に電気数学と同様に重要となるのが「電気理論」です。電気理論は電気エネルギーの作用や回路上での動きを定性的にはもちろん定量的にまとめた理論です。この電気理論無くしては電気エネルギーについて話をするのは不可能です。
前述の電気数学はこの理論を理解するために必要となります。学習方針として「電気数学」と「電気理論」を並行して進めるのもひとつであると言えます。
①電圧,電流,電気抵抗の概念
②オームの法則
③キルヒホッフの法則
④電力計算
⑤合成抵抗
⑥直流回路
⑦交流回路(単相交流回路,三相交流回路)
⑧電気計測
⑨分流回路,分圧回路
⑩抵抗,コイル,コンデンサ(RLC回路)
⑪電磁気論(電界,磁界)
⑫インピーダンス
⑬回路計算と各種定理
ここでもまた多くの概念について習得する必要があります。「オームの法則」ですらうんざりなのにその他いくつの理論をマスターしなければならないのかという絶望感すらあります。ですが、これもまた最初から完璧である必要はありません。ひとつひとつをゆっくり理解していけば良いです。というよりも電圧や電流などの概念,オームの法則やキルヒホッフの法則を理解せずに先に進むことは不可能です。
このことの裏を返せば、まずは電圧,電流,電気抵抗の概念とオームの法則およびキルヒホッフの法則に的を絞って徹底的に理解することは電気知識の習得上で非常に有効であるといえます。
自身がターゲットとする範囲の電気数学が理解できていて①から順に知識を積み上げれば試験や実務で必要なことを理解できます。
3)発電〜受電
電気エネルギーの知識習得において外せないのは発電についてです。電気エネルギーが如何にして生み出されるのかについて、これが各種発電所でつくられるということは広く知られていますが、その原理にもいくつかの種類があります。また発電のためのエネルギーにもいくつかの種類があります。
電気エネルギーが生み出される原理と、生み出された電気エネルギーは別のどのようなエネルギーから取り出されそしてどれくらいを有効活用できたのかなどについて学ぶ必要があります。具体的には以下です。
①水力発電
②火力発電
③原子力発電
④その他発電
⑤タービンと発電機
⑥発電効率
続いては送電です。発電により生み出された電気エネルギーは需要家まで安全にかつ確実に、そして効率よく届けられる必要があります。そのためには送電の技術が欠かせません。上記のような目的を達成するために送電にもいろいろなルールがあります。これについても学習する必要があります。
①架空送電線路
②地中送電線路
③送配電系統と構成
④配線抵抗降下
⑤高調波
次に受変電です。生み出された電気エネルギーはそのままではとても危険な電圧を有しています。ですので使用場所つまり需要家へ送り届けられるまでまたは需要家内で使用可能な状態に変え、かつ測り取れるように変える必要があります。具体的には以下の項目について知識習得することとなります。
①変圧器
②変流器
③調相設備
④進相コンデンサ
⑤直列リアクトル
電気事故とその保護装置についても学習する必要があります。発電,送電,変電と工程が進み需要家まで電気エネルギーが送られる際に何らかのトラブルが発生するかもしれません。そのようなときに何の手段も講じず放置してしていたとしたらほぼ確実に被害は拡大するでしょう。電気エネルギーは想像をはるかに超える力であることが多くまた肉眼でとらえることができないということから、そのトラブルは即人命に直結すると考えるべきです。運良く人命に対する危機を免れたとしても、建築物や機械など大切な財産を破壊してしまう可能性が非常に大きいです。
保護については、遮断器が動作するまでの時間とそのための整定値(設定)やこれにおけるルールについても知る必要があります。
①短絡電流
②過電流継電器
③(方向性)地絡継電器
続いては電力の計測に関する知識についてです。電力をどれくらい使用しているのか、またその電力を効率良く使用できているかについて知るためには計測を必要とします。計測は前述の事故防止や軽減にも役に立つ大切な技術となります。
①計器用変成器
②各種計器動作原理
③二電力計法
④電力量計とパルス
4)電気的負荷
電気エネルギーはもちろん使用するためにつくり出されます。そしてその供給先は電気で動作する機器となります。これらの機器で電気エネルギーがどのように作用するのかについても知る必要があります。
①直流電動機
②交流電動機
③電熱(ヒータ)
④照明器具
⑤回路素子
⑥電池(電気化学)
上記は各々、電気を回転力や熱,光などに変換する機器です。その他電気(電子)回路につなぎこまれる部品である回路素子や電気を溜めたり放ったりする電池についてもとりあげています。
エネルギー変換をする機器については、その変換原理やそこで消費されるエネルギー量などの算出方法を学ぶことでこれらの機器の扱うための知識を習得します。回路素子についてはこれらが回路上にあることでどのような作用が発生するのか、また電池においては充放電時に内部ではどのような化学反応が起きているのかなどについての知識を習得します。
4.回路を見ながらの計算
ここまで、電気エネルギーにおける知識習得のための学習項目を挙げました。完全に網羅しているわけではありませんが、説明してきた項目をひとつずつ理解していけば必ずそして知らぬ間にある程度高い知識レベルに到達することができます。
現実的には実務において、ここまでにあげた項目を基本的にでもきっちりと理解できている人は一握りではないかと思われます。ということは、基本と言いながらもその理解を要求される量自体が非常に多いものとなります。
ですのでなおのこと、短時間で一気に習得できるものでもなく、また簡単でもないということになります。ということはひとつずつをじっくり積み上げるしか方法はないということです。ここで上げた項目の番号の若いところからゆっくりと進めていけば良いです。
5.電気(電子)制御に関する知識
ここからは、電気による制御においてどのように知識を習得していけば良いのかについて説明します。制御を知るということはまず回路について詳しくなるということです。さらにいえば、制御回路図をよむことができ、かつ制御回路図をひくことができるということになります。
回路図についての知識を深めるということはわかるとしても、具体的になにをしていけばよいのかについては以下に記載していきます。
1)電気図面とシンボル(記号)
「まずは、回路図面に詳しくなること」と述べましたが、誤解をおそれずにいえば「非常に広い意味では回路図も言語」であると考えます。対象機器への電気信号伝達による命令を配線でつないだものであるならば立派な言語のひとつではないでしょうか。もちろんハードウェアとして組まれたこれらはコンピュータなどの中央演算装置(CPU)などが直接読み込むことはできませんし、図中の記述の細かな部分についてもローカルなルールが反映されていたりするので厳密に言語という表現は適当ではありません。
とはいえ、電気回路図は操作対象の機器に動作を開始させたり停止させたりなどの指令を与えます。人間用の「言葉」でつらつらと書き連ねるのは書く側も読む側も過大な労力が必要となります。そこで用いられるのが「制御回路図」などの図面です。
「非常に広い意味では言語」というのは、回路図に記載されたシンボルのひとつひとつが電気(電子)回路上での意味と動きを持っているからです。そしてこれらがどのような意味を持ち現実にはどのような動きをするのかを知るということが人間が普段使用する言語の単語を学ぶこととほぼ同じ意味合いとなります。
まずは接点記号やコイル記号などが図面上でどのように表現され、さらにそれらは回路上でどのように作用するのかについて知識を習得しましょう。
以下電気回路図のよみ方~制御図面など~に電気回路図をよむために必須である知識について記事をまとまています。ここに記載されているシンボルのうち頻出のものについては記憶しておくようにしましょう。もちろんすべてを覚えていなくても都度調べて理解できるように資料などは手元に用意しておく方が良いです。
2)リレーシーケンス制御
制御の知識習得で避けて通れないのが「シーケンス制御」です。シーケンス制御についてはシーケンス制御の基礎〜自己保持回路〜で解説しています。この記事のタイトルにあるように「自己保持回路」は制御について学ぶうえで必修の項目になります。
「リレー」や「電磁継電器」などの動作メカニズムを理解したうえで回路上でどのように動作して「自己保持」をするのかについては必ず理解しておく必要があります。同時に接点やコイルという単語にもこの時点で慣れておくようにしましょう。
3)タイマー,カウンター
リレーシーケンス制御で欠かせない機器として「タイマー」や「カウンター」があります。これらは出力や信号を遅延させたり、信号の数をカウントしたりします。タイマー・カウンターの使い方〜制御幅の広がり〜で説明をしています。このような機器を使用することで制御できる幅は大きく広がり、より思いどおりの設計をすることができるようになります。
上記の自己保持回路を中心としたリレーシーケンス制御にタイマーやカウンターで別の動きを加えることで一定時間のみONする回路や特定信号の回数に応じて出力を変化させるなど、応用範囲は非常に多くあります。
そしてタイマーやカウンターも機器としての仕様があります。先の電磁継電器などにも仕様はありますがタイマーやカウンターに比べると単純です。各型式における動作の特徴をカタログや取扱説明書で把握して選定することも非常に大切な知識習得のひとつです。
4)アナログ,パルス信号の取り扱い
機器を制御するとき、全てがON/OFFのみで成立させられない場合があります。「機器の位置を一定の位置に保ちたい」や「時間とともに変化する設定値に応じた出力で動作させたい」などの要求に対してON/OFFの二値だけで制御するのは難しいです。
その場合は「アナログ信号」を扱うことになります。ある一定の信号範囲を0~100[%]としてその範囲での出力をすることで機器の動作を任意の位置や値に合わせるように制御することができるようになります。
電動機がどれくらい回転したのか、これまでどれくらいの液体が流れたのか、一定の時間内にどれほどの電力が消費されたのか(電力量)などを計上する場合はアナログの信号ではなく「パルス信号」を使うことになります。先のカウンターなどを信号の受け先にしてそこへ向けてパルス発信します。そうすることで非常に多くの桁の数値を計上することができるようになります。
これらのようなON/OFF以外の信号を扱えるようになるのも制御の学習に欠かせないものとなります。
アナログ信号の扱いや信号変換に関してはアナログ出力センサー~様々な量を測る~の記事やアイソレーター・ディストリビューターの記事他でも解説しています。取扱説明書を充分に確認のうえ各端子の意味合いも把握しましょう。
5)調節計(PID制御)など
調節計などの制御器は慣れないうちは特にややこしく感じます。「4)」で述べているようなアナログの機器から信号を受け取ることが多いです。そのうえで接点による出力であったりアナログの「操作量」であったり、また入力された信号をそのまま出力する「伝送出力」であったりという使い方があります。
各々目的に応じて使用しますが、選定の時点から「電源」「入力信号種別」「出力信号種別」「イベント入出力」「通信機能」などどのような機能があるのかについて知っておく必要があります。メーカーによっても使い勝手は若干異なりますのでそのあたりも含めて知識を習得しましょう。
6)PLC,タッチパネル
PLCはもはや産業では欠かせないツールとなっています。少しでも規模が大きくなるとPLCを導入する方が圧倒的にコストパフォーマンスが高かったり、変更(改造)対応もやりやすかったりと多くのメリットがあります。そのため様々な機器,設備に組み込まれており、日々その技術や機能性もあり得ないほどの早さで向上しています。
タッチパネルは上記PLCの性能を大きく引き出すことに寄与し、制御盤や操作盤をすっきりとコンパクトにできる機器です。通常PLCと組み合わせて用いることを前提としているのでその連携性,親和性は言わずもがなです。タッチパネルとPLCを使用し、プログラム化することで省略できる機器も存在します。
動作の変更はもとより追加についてもハードによる結線のみで構成された制御盤に比べるとはるかに容易になります。ですが、タッチパネルやPLCを扱うにはハードで結線される制御についても充分に知識があり、それに加えて別途これらの知識を得る必要があります。多くの時間を費やすことにはなるでしょうが非常に需要の多い付加価値の高い知識となります。リレーシーケンスを含むPLC等の学習手段についてはシーケンス制御を学ぶためにの記事にもまとめてあります。
7)通信
PLCをはじめとする産業用コンピュータや調節計などにおける通信技術も飛躍的に進歩しています。「6)」にあるタッチパネルとPLCの関係も通信の確立により成り立ちます。通信の規格にもさまざまあり、以前から使用されている「RS232C」,「RS485」などのシリアル通信や産業用機器では非常に有名な「CC-link」、また多くの人がすでに利用しているUSB通信、LANケーブルを使用した「Ethernet/IP」,「EtherCAT」など非常に多くの規格が存在します。この他にも「Modbus通信」、最近広がりつつある「I/O Link」などもあります。
これまではペア線などですべての信号を、電気のルールに従ってひとつひとつ結線する必要がありましたが、昨今では多くの要素がLANケーブルなどでまとめられるようになっています。その結果「1:多」や「多:多」のネットワークグループも構築できるようになっており、制御の規模も比して容易に大きくできるようになっています。
通信の深い知識もそうですが、まずは通信利用のためのルールなどから知識を習得していくようにしましょう。
8)位置決め制御,サーボ制御
位置決め制御は電動機に機械的に接続されたユニットを目標の位置まで目標の速度でさらに目標の軌道で到達させるという高度な制御になります。加工機やロボットなどに応用される技術であり、使いこなすことでより精密な動作を実現することができるようになります。
PLCと連携する位置決めユニットやサーボアンプなどを駆使することになり、構成の理解から入ることとなります。複雑ではありますがこちらも汎用性の高い知識となります。
また、他の制御の知識と少し違うのが「機械系」の知識も必要とします。これはユニットの動作機構がそのまま制御系に影響することに起因します。例えば同じギヤによる駆動ユニットでも、そのギヤ比や歯数で制御系で設定する数値が変化します。「メカ」と「エレキ」の双方の視点が必要となりますので、これについてはまずどちらかの知識を優先して習得することをお勧めします。
9)結局数学は必要
電気エネルギーの項目に比べて、一見数学と向き合う機会の少なそうな制御の項目ですが、完全に逃げ切ることは不可能です。リレーひとつにおいても「そのコイルが如何ほどの電圧で動作し、結果どれくらいの電流が生じるのか」や「構成した回路の電流値に見合った容量の電源が用意されているか」などはもちろん、制御においては「進数変換」における知識も必要となります。
結局は数学からは逃れられないのです。制御のことにおいても知識が深まれば深まるほど比例してディープな数学の世界に入っていきます。
ここはひとつ、たとえ苦手であったとしても数学に向き合う覚悟が必要になってくる、ということでしょうか。
5.それでも知識量は増える
今回この記事では、電気の分野における知識習得のためのガイドラインを、筆者の経験を織り交ぜた形で説明しました。筆者もここでとり挙げた項目の全てを完璧にマスターしているなんてことはありません。やはりまだまだ知らないことで溢れています。
どの項目においても深く探求してくほどに飛躍的に高いレベルの知識を要求されることとなります。興味の続くかぎり深く掘り下げることも素晴らしいことですし、業務などの目的で必要なレベルを見極めて、次の別の知識を得にいくこともやはり素晴らしいことです。
いずれにしても学ぶことによりレベルアップするのは尊いことです。
そしてなにより強く伝えたいことは「知識の習得に費やした時間は裏切らない」ということです。目的はどうあれ悩み思(試)考錯誤して得た知識は必ずどこかで役にたつことですし、次のレベルの学習の手助けをしてくれます。
焦る必要などありません。むしろ焦る必要のないように普段から少しずつ学べばよいのではないでしょうか。
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